佐藤智恵氏

 当時、須坂藩江戸藩邸下屋敷に仕えていた女性は、「十七日のご出立には下は白装束、刀までおそろえになり、お覚悟の上(だった)と思われます」(*1)と語っていますから、最初から切腹する覚悟で江戸城に向かったのは間違いありません。直虎の人生は、悲しい幕切れを迎えるのです。

佐藤 なぜハウエル教授は堀直虎に魅了されたのでしょうか。

ハウエル 彼がとても若くてダイナミックなリーダーだったからです。写真機を購入して自撮りをするという一面もあれば、大名としての改革を断行するという一面もあった。進取の気性を持ちながらも、最後は切腹してしまう。どれだけ西洋から影響を受けても、武士は武士。武士としての責務を全うしたのでしょう。そういう新しさと伝統が共存しているところに魅かれますね。

佐藤 堀直虎の人生も授業で教えているのですか。

ハウエル 授業でも紹介していますよ。私が気に入っている武士ですから、学生が興味を持ってくれるとうれしいですね。

(*1)須坂市公式ウェブサイトより。なお、須坂市立博物館では堀直虎没後150年記念事業として2017年11月19日まで特別展「須坂藩堀家14代」を開催中です。

>>続編『明治以前の日本が世界に与えた影響をハーバード大教授に学ぶ』は10月6日(金)公開予定です。

デビッド・ハウエル (David L. Howell)
ハーバード大学教授。同大学東アジア言語文明学部長。専門は日本史。ハーバード大学では学部生を対象に日本史の授業「アジアの中の日本、世界の中の日本」を教える。特に江戸時代、明治時代の社会史に詳しい。著書に「ニシンの近代史―北海道漁業と日本資本主義」(岩田書院)がある。
佐藤智恵(さとう・ちえ)
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。コロンビア大学経営大学院入学面接官、TBSテレビ番組審議会委員、日本ユニシス株式会社社外取締役。主な著者に『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、最新刊は『ハーバード日本史教室』。佐藤智恵オフィシャルサイトはこちら