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佐藤 アメリカの高校の世界史の授業でも日本史については取り上げられていなかったということですね。

ジョン ほとんど習わなかったです。私が通っていたのは米国聖公会系のボーディングスクール(全寮制高校)でしたが、1年生のときに米国史、2年生のときに宗教学の授業の中で少し歴史を学びました。中東史、西洋史、米国社会運動史(市民運動や女性解放運動)などの科目もありましたが、アジアの歴史の授業はなかったです。他のアメリカの高校でもアジア史はほとんど教えられていないと思います。

 歴史に限らず、アメリカの学校の教育内容は欧米関連に偏っているのは否めません。たとえば、アメリカの高校生はアジアに関連する文学をあまり読む機会がありません。マキシーン・ホン・キングストンの「チャイナタウンの女武者」やエイミ・タンの「ジョイ・ラック・クラブ」など、アジア系アメリカ人作家の作品は課題図書には入っていても、必修授業で習うことはありません。F・スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」やJ・D・サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」などとは扱いが違うのです。

佐藤 「アジアの中の日本、世界の中の日本」の授業では、多くの課題図書を読まなくてはなりませんが、その中で特に興味を持った作品はありましたか。

ジョン 「源氏物語」と「枕草子」です。紫式部の「源氏物語」は日本文学史の中でも最重要作品の1つと位置付けられていますが、なぜこの作品がこれほど長く評価されているのか、とても興味があります。学者も読者も時代を超えて、最後は「源氏物語」に立ち返るのはなぜなのか。授業中も質問したのですが、「源氏物語」が長く読み継がれている理由についてはもう少し詳しく知りたいですね。

 それから清少納言の「枕草子」もお気に入りの作品です。マナーの悪い人や礼儀作法を知らない人に対しては辛口で、ユーモアを交えて描写する。その視点や語り口がとてもユニークだと思いました。