「ある銀行労働者の20年」の主人公は、周りの人々から「急進的な労働組合員」と見られていましたが、彼は、「社員の人間性を取り戻す」という極めて真っ当な目的のために戦っていました。実際のところ彼が要求していたのは、社員間の過度な出世競争や時間外労働を奨励するような企業文化を改めることでした。他の組合員は保守的で、彼と共に会社と対立しようとはしませんでしたが、彼らは主人公の真の目的を理解していないように感じました。

 私がなぜこの作品に特に惹かれたかといえば、同じようなことが他の国でも起こりうると思ったからです。著しい経済成長を遂げている発展途上国の国々では、「人間疎外」が起きている職場がたくさんあるのではないか。自分は機械の部品か歯車のように扱われていると感じ、人間性を喪失してしまった社員が多くいるのではないか。「社員は家族」とは程遠い状況になっているのではないか。こういうことを世界は日本の事例から学べると思いました。

佐藤 今日の授業のテーマは、「世界における日本の役割とは?」でした。特に印象に残っている点は何ですか。

ジョン 歴史の一つひとつの事象には二面性があることです。良い面もあれば悪い面もある。先ほども申し上げたとおり、日本は戦後、政治的にも経済的にも変革を遂げて、世界から高い評価を得ていますが、反面、過労死や人間疎外などの社会問題を生みました。

 そのほかにも、自由貿易を推進すれば、関税についての国内問題がおこる、平和主義を貫けば、思いやり予算の問題がおこる。戦争は終結したが、韓国との間には慰安婦問題が、中国との間には「南京大虐殺」の問題もある。歴史を見るときには、常に正負、両方の側面から見ることはとても大切だと感じました。

 アンドルー・ゴードン教授とデビッド・ハウエル教授は大きな歴史の流れを講義しながらも、要所要所で、負の側面や知られざる歴史に焦点をあててくれたので、歴史を見る目を養うことができたと思います。