引っ越しは、新居が1000キロメートル先にあろうが10メートル先にあろうが同じ労力を必要とする一大イベント。何回もの引っ越しを経験した達人たちがつかんだ究極の引越術とは「引っ越しは段取りで決まる」である。

 引っ越しには、当日の引越作業以外にさまざまな仕事がある。引っ越しの達人たちが真っ先になすべき作業として挙げるのが、「新居の下見、間取り図の入手」である。

 「移転先を会社が紹介してくれるにせよ自分で探すにせよ、必ず下見をして間取り図を手に入れ、できればメジャーで計測する。これが引越作業を進めるための基本地図になる」(損保・52歳・引越歴10回)

 「下見の際は、部屋の梁(はり)に注意する。床の部分に十分な広さがあると大丈夫と思ってしまうが、梁が出ているとタンスが入らなくなったりする」(生保・55歳・9回)

 「携帯電話で写真を撮って送れば、妻がカーテンを検討することもできる」(教員・56歳・8回)

 間取り図を入手したら、家具の配置やレイアウトを考え、そのうえで新居に持って行くもの、捨てるものを分類する作業に入る。ここで必ず起きるのが家族内のけんか。不用品を捨てられず、ついつい荷物が多くなるのだ。

 「移転先の観光パンフレットを用意して家族に見せ、新しい生活が始まるんだ、と強調して不用品を捨てるように促してきた。おかげですっかり、物を増やさない生活が身についてしまった」(流通・42歳・5回)

 東京電力がインターネットを通じて行なったアンケート調査(回収数約7000、複数回答)でも、「もっと早くやっておけばよかった、と後悔したこと」で59.8%もの圧倒的な回答があったのが「不用品の選別・処理・処分」だった。引っ越しにおいては持たざる者こそ強し、である。

 不用品の処分はネットショップ、リサイクル業者、廃品回収業者などを活用するが、ミニトラックで街を流している廃品回収業者には要注意。

 「無料で引き取ります、というテープを流しているが、品物を見せると、処分を急ぎたいこちらの足元を見ていろいろな理由を付け、結局、処分料を取られることが多い」(ホテル・58歳・10回)