「1人欠ければ年間1000万円の損失」。人が資本という外食産業特有の課題解決に挑むカッパ・クリエイトの健康経営の全貌

「人」が価値を生み出す外食産業において、従業員の健康は単なる福利厚生の枠を超え、経営の根幹を揺るがす重大課題である。回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を国内外で約300店舗展開するカッパ・クリエイトでは、従業員1人当たりの病欠を「年間1000万円」の価値創出機会を失うことに等しい経営リスクと捉え、デジタル技術を駆使した抜本的な健康経営※に乗り出した。多拠点企業における健康経営の戦略的実装プロセスを明らかにする。

※「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

「人」を資本とする外食産業の避けられない「経営課題」とは

「われわれのビジネスは、従業員がいて初めて成り立ちます。お客さまに価値を提供し、利益を生み出すのも全て人。従業員が自身のスキルや経験を生かして、長く活躍し続けるためには、健康経営は避けて通れない経営戦略なのです」

 そう語るのは、カッパ・クリエイト取締役経営戦略本部長の福谷史郎氏だ。だからこそ、同社では健康経営に積極的に取り組み、2024年、25年、26年と3年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されている。

 そんな同社でもなお、解決できていない課題があった。「健康情報のタイムラグ」である。全国各地に店舗が点在しているため、健康診断の結果が会社に届くまでに多大な時間を要していたのだ。

「一括で健診を行うオフィス勤務と異なり、店舗ごとに地域の病院で受診するため、健康診断の結果を本部で把握するまでに数カ月、産業医が判定を下す頃には、異常が見つかってからさらに長い期間が経過しているケースもありました。このタイムラグは大きな課題でした」(福谷氏)

 実際に、急に体調を崩して休職せざるを得なくなった従業員の記録をさかのぼると、過去の健診で異常値が出ていたケースも少なくなかったという。

「従業員1人が年間に創出する営業キャッシュフローを試算すると、1000万円を超えます。1人の病欠は、会社が本来得られるはずの1000万円の価値創出機会を失うことに等しい経営リスクなのです」(福谷氏)

 危機感を募らせた同社は、25年7月、健康診断データの一元管理とオンライン診療を組み合わせた健康管理プラットフォーム「スマートワンヘルス」の導入に踏み切った。導入からまだ1年足らずだが、「定量・定性の両面で大きな成果が上がっている」(福谷氏)という。

 次ページからは、カッパ・クリエイトが、長年の課題だった「健康情報のタイムラグ」を「スマートワンヘルス」によってどのように解決したのか、その導入プロセスと驚くべき成果について詳しく紹介する。