なぜ、創業100年企業は「勘と経験」の人事からデータを武器にする「戦略人事」へ舵を切ったのか

大阪の老舗商社・マツモト産業は、組織力強化のため中長期経営計画と連動した「戦略人事」へとかじを切った。アナログ管理から脱却し、データを「経営の武器」に昇華させ、変革へ挑む同社の軌跡に迫る。

老舗安定企業が抱える人事面の課題

 1919(大正8)年4月創業の溶接機材・産業機器専門商社、マツモト産業(本社 大阪市)。

 同社は、自社グループ内にメーカー機能を有している子会社(マツモト機械)を保有し、顧客の細かなニーズに合わせて製品をカスタマイズ・製造できる「メーカー商社」という強みを持ち、国内に50拠点、子会社3社、海外に現地法人3社、800人を超える従業員を抱える。

 これまで高度経済成長の波に乗って、拠点ごとに裁量権を大きく与える独立採算制による経営形態を取っていた。しかし、収益面でのメリットがあった一方で、長期的な経営視点においては以下のような要改善点を抱えていたという。

①   マネジメント機能の再強化の必要性
 拠点ごとの裁量権を本社に統合したことで、少なからず現場に影響を与えてしまい、現場ごとに育成方針の違いが見られた。「現場で部下を育成する」という部分で、立場に応じた違いも見られたため、組織として「人を育て、任せる」マネジメント力の向上が必要となった。

②   従業員満足度の低下
 以前は評価結果を本人に伝える面談や仕組みがなく、従業員は「自分の評価を推測する」という状態だった。そのため「なぜこの評価なのか」という理由が分からず、また「会社が自分の成長を見てくれている」という実感を持てていなかった。

 そこで、安定的な収益によって長年無借金経営を続けている同社だが、社会・経済の不確実性の高まりや競争環境の激化に備え、次の100年に必要なのは「組織力」の強化が必要だと判断。

「従業員満足度の向上」で従業員の定着やモチベーションアップを図り、「適材適所への人材配置」や「次世代リーダーの育成」で企業の総合力を上げる――データを活用し人的資本の最大化を図る「戦略人事」へ舵を切った。

 まず取り掛かったのは、評価のExcel管理の廃止と人事・労務などの既存ツールの刷新。そして人材データベースの構築だ。

 果たして、100年企業のマツモト産業は戦略人事によりどのように変わっていくのか次のページで掘り下げる。