精密大手オリンパスの企業買収関連資金が、実は過去の証券投資を隠蔽するために使われていたことが明らかとなり、報道合戦はヒートアップしている。

 だが、この巨額の資金がどのような目的で、どう使われたのか、損失隠ぺいの仕組みはどうなっているのか。新聞、テレビの溢れんばかりの情報を見聞きしていても一向にわからない。そこでここでは、すでに公開されている情報、報道されている情報を基に、大胆にオリンパスの狙いと損失隠蔽の仕組みを推理してみよう。

 まず、各種の報道では、買収関連資金が損失の穴埋めに使われたという表現が多いが、この表現は恐らく的確ではない。自分自身の損失を自分自身で穴埋めする原資は、毎期稼ぎ出す利益しかなく、買収資金そのものは利益を生みだすわけでないからだ。

証券の含み損を
「のれん」に化けさせる操作

 では、オリンパスの目的は何だったのか。結論から先に言えば、それは「損失ロンダリング」だろう。証券投資による「隠れた損失」をロンダリング(洗濯)して、「白日の下にさらせる損失」に化けさせることである。そのために目をつけたのが、企業買収というわけだ。

 ごく簡単に言うと、企業を買収する際、買収した企業の純資産(資本)を上回る価格で買収した場合は、その差額を「のれん」として、貸借対照表の資産に計上し、適切な期間(20年以内)で償却(費用化)していく。例えば、買収価格が50億円で買収した企業の純資産が10億円、償却期間が10年なら、差額は40億円だから、毎年4億円ずつ費用として損益計算書に計上される。

 オリンパスの場合はどうか。次のページから図を使って推理してみよう。損失隠しには、複数のファンドやアドバイザー(助言会社)が関わっているうえ、損失隠しが長期にわたっているため、細部にこだわると複雑怪奇で本質が見えなくなってしまう。登場人物(法人)が複数あっても、役割が同じなら一つと考えた方がわかりやすい。そうすると、主な登場人物はオリンパス、ファンド、そしてアドバイザー(助言会社)の3者となる。