2020年の時点で国の債務がどれだけ膨らんでいるのか、正確な試算はできませんが、少なくとも債務の総額は1500兆円を超え、GDP比で300%に達していることだけは間違いありません。

 少子高齢化による財源不足が、年々加速度的に進行していくからです。そこまで財政悪化が極まると、もはや末期の癌患者と同じで、救いようがありません。

 ヘッジファンドが攻撃をするまでもなく、金融市場は日本の財政悪化に応じて、ごく自然な形で日本国債に正当な評価を下すでしょう。

 つまり、国債利回りは3%を超え、日本は自力での国債発行を断念せざるをえなくなるのです。

 政府は何も手を打つことができずに、IMFに支援を求めることを決定するでしょう。限界を超えて財政悪化が進んでしまっては、もはや政府自らが国民に過酷な生活を強いる再建策を示すことはできないからです。

 それよりは、IMFに駈け込んで強制的に再建策を押しつけられるほうが、はるかに楽なはずです。

 しかし、IMFの2011年8月末時点の融資枠は、わずか4000億ドル(約30兆円)です。楽観的な見通しを立てて、仮にIMFが2020年に融資枠を5倍の2兆ドル(約150兆円)に拡大できたとしましょう。

 それでも、日本の債務は少なく見積もっても1500兆円超あり、IMFが単体で救済をするには荷が重すぎます。どうしても世界各国による追加融資が必要になります。

 過去の韓国やインドネシアなどの例を見ても、IMFが融資するだけで厳しい財政再建策が押しつけられるというのに、世界各国の追加融資まで加わっては、その財政再建策は日本にとって非常に過酷なものになるでしょう。

 消費税の20%への引き上げや年金支給額の15%カット、医療費窓口負担の30%増など、国民の可処分所得は実質的に2割超も減ることになり、日本に住んでいても明るい未来をまったく思い描くことができなくなってしまうでしょう。

 おまけに悪い物価上昇が実質的な所得をさらに押し下げます。比較的短い期間で円相場が50~100%下落する一方で、物価は5~10%上昇してもおかしくはありません。

 かつて韓国がIMFの救済を受けたときは、ドル・ウォン相場が1ドル1000ウォンから2000ウォンへ下落し、物価は10%上昇しました。可処分所得が減る上、物価も上がれば、国民生活はますます困窮することになります。

 こうして見てくると、はっきりわかることがあります。それは、ヘッジファンドの攻撃が早ければ早いほど、日本が受けるダメージは小さくなるということです。


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