普通、CDアルバムというのは、どんなにそのアーティストの熱心なファンであっても2枚以上買うことはまずない。音楽を聴くのが目的だから当然のことだ。ところがアイドルグループなどの場合、ファンは1人で5枚、10枚と買う。その理由は「総選挙」の投票権と握手券にある。

アイドルグループの
選挙は「資本多数決」

 総選挙というのは実によく考えられた仕組みだと思う。まず名前が「人気投票」ではなく「総選挙」というのが秀逸だ。実体は、人気投票なのにもかかわらずだ。

 これは若い人だけの現象ではないが、実際の選挙の投票率は非常に低迷している。どうせ自分が投票しても政治は変わらない、世の中は変わらないというあきらめに似た気持ちを多くの人が持っているからだ。

 しかし、アイドルグループの選挙は明らかに異なる。実際の選挙では、自分が投票した候補者が落選すると「死に票」になってしまう。それに対し、アイドルグループの総選挙では、得票数に応じて序列が決まるという仕組みなので、自分の投票によって応援するアイドルがどこまで上がって行くかという楽しみがあるのだ。

 人間が行動する場合、その動機には「内発的動機」と「外発的動機」という二つがある。例えば会社の仕事で言えば、外発的動機は報酬の多寡である。たくさん報酬をもらうことでやる気が起きる。これに対して内発的動機というのは、仕事のやりがいや、興味といったものが該当する。

 一般的に人間は、外発的動機より内発的動機の方がより強いとされている。アイドルグループの総選挙への投票は、まさに「内発的動機」であるため、その力はかなり強いと言えるだろう。

 しかも、通常の選挙は、誰もが平等に1票であるのに対して、アイドルグループの投票権は買ったCDの枚数に比例する。仮にCDを100枚買えば100個の投票権がある。これはまさに株主総会における議決権と同じで、資本主義の原理にのっとった極めて公平なシステムである。保有する株数に応じて議決権の力は異なる。つまり出した金額によって大きい影響力が行使できるわけで、これを「資本多数決」という。

 アイドルグループの選挙では、行使したい議決権がたくさんほしければCDをたくさん買えばいいわけだから、これほど公平なことはないといっていいだろう。