10月にシンガポールで「クールジャパン月間」と銘打った日本ブランドPRキャンペーンが開催された。その一環として原宿のアパレル15ブランドがアンテナショップを開設した際に、コラボレーションした現地ブランド『77th Street』の代表を務めるのがエリム・チュウ氏だ。彼女はシンガポールで起業家のオピニオンリーダー的存在であり、同時に社会起業家としても有名で、受賞歴も数多い。ごく平凡な少女だったという彼女の、成功までの道のりを聞く。
(聞き手/ジャーナリスト 大野和基)

現在の成功など
想像もしなかった少女時代

――今チュウさんは、女性起業家として成功していますが、どんな子ども時代でしたか。

Elim Chew(エリム・チュウ)
ストリートファッションブランド『77th Street』の創業者・CEO。シンガポールへのユースオリンピック招致や、日本の経産省の「クールジャパン海外戦略推進事業」にも関わるなど、幅広い分野で活躍する。シンガポールの次世代を担うリーダーの一人。
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 学校での成績はあまりよくありませんでした。遊びが大好きで、なぜ一生懸命勉強しないといけないのかわかりませんでしたし、普通に日々楽しい生活を送っているだけでしたからね。まさか自分が成功するとは思ってもみませんでした。

 17歳で学校での最終試験が終わったときに、ロンドンの学校に行こうと思い立ちました。従兄弟がイギリス人でイギリスにいたからなのですが、実際行ってみると何を勉強したらいいかもわからなくて、とりあえず美容師のコースを取りました。やってみると意外に面白く、ヘアスタイリストは自己表現ができるのでますますはまっていき、将来もこの道で身を立てようと思いました。

 しかも、ロンドンは保守的なシンガポールと違って、文化も流行の最先端でとてもカラフルで楽しかったですね。ところが19歳になると母親から連絡があり、「十分ロンドンにいたのだからそろそろシンガポールに戻ってきなさい」と言われてしぶしぶ戻ることになります。

 戻ってみると退屈で全然おもしろくありませんでした。ロンドンではヴィダル・サスーンにもいたので、シンガポールに戻ってきたとき髪の色はパープル。ヘアスタイルも奇抜でみんなから指をさされ、じろじろ見られ、なかには笑っていた人もいました。そんなスタイルの人は私しかいませんでしたから。靴も昔のシンディ・ローパーのような、先のとがった黒と赤の左右色違い。今で言うとレイディ・ガガみたいな。とにかく、シンガポールには好きなことがありませんでした。