右派の「完全自主防衛主義」は
日本を崩壊させる

 一方、右派寄りの人たちは、自国防衛の強化を主張する。しかし、もはや日本が多少がんばったくらいでは到底かなわないくらい、中国との間の格差は開いている。

 16年の中国の軍事費は2150億ドルで、米国に次いで世界2位だった。日本の防衛費は461億ドルで世界8位。中国の軍事費は、なんと日本の4.6倍である。さらに中国は、米国、ロシアに次ぐ「核兵器大国」でもある。

 今から中国に追いつくべく、大金を投じて軍拡するというのは、現実的ではない。「いや、そんなにたくさんの金はいらない。なぜなら核武装すればいいからだ」という意見もある。確かに、最貧国の北朝鮮が保有していることからもわかるように、核兵器は「もっとも安上りな方法」だろう。

 しかし、ここでも話は簡単ではない。核兵器の拡散を防ぐ「核拡散防止条約」(NPT)がある。NPTは、米国、英国、フランス、ロシア、中国以外の国の核保有を禁ずる、極めて「不平等」な条約だ。それでも、現在190ヵ国が加盟し、世界の安定を守る秩序として、機能している。

 世界には、「NPT未加盟」で「核保有国」になった国もある。すなわち、インド、パキスタン、イスラエルだ。NPTに加盟していたが、脱退して核保有国になった国も、一国だけある。そう、北朝鮮だ。

 日本が核武装を決意すれば、NPTを脱退せざるを得ない。つまり、核武装論者は、「日本は、北朝鮮と同じ道を行け!」と主張しているのだ。そんな道を行けば、国連安保理で過酷な制裁を課されることは、想像に難くない。
 
 日本の核武装論者は、「日本の立場は特殊だ」と主張するが、「アグレッシブな核保有国が近くにいる」のは日本だけではない。

 たとえば、核大国ロシアと戦争したジョージアは、自衛の為に核を持つべきだろうか?ロシアにクリミアを奪われたウクライナは、核を持つべきか?核大国・中国の脅威に怯えるフィリピンやベトナムは、核を保有すべきか?

「すべての国は平等」という原則に従えば、「持つべきだ」となるだろう。あるいは、「すべての国が核を廃棄すべきだ」と。しかし、これらは、いずれも「非現実的な議論」に過ぎない。

 結局、「自分の国を自分で守れる体制を今すぐ作ろう」という主張は、とても現実的とはいえない。では、中国に屈伏するしか道はないのだろうか?