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職あれば食あり

なぜ寒さ厳しい山奥の工房に人が集うのか
田舎のない家具職人がコツコツ作った
平凡じゃないけど幸せな暮らし

まがぬまみえ
【第25回】 2011年12月15日
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 工房の片隅に、小さな薪ストーブがあった。小さく見えたのは、工房がかなり広かったせいかも知れない。

 「ちょっと寒くなってきましたね」

 佐藤健一さん(42歳)が麻袋から薪を取り出してストーブにくべる。オレンジ色の炎が燃え上がり、冷たかった手がじんわりと温まっていくのを感じた。気がつくと、一緒に工房を訪れた知人たちがみな、我もわれもとストーブの周りに集まってきていた。

 「不思議ですよね。火を焚くと、何もしなくてもこうして人が集まってくるんです」

 佐藤さんはオーダーメイドの家具を作る職人だ。

機器メーカー社員から「家具職人」へ
しかし“天狗”になって再び機器メーカー社員に 

 東京に何年も暮らしていながら、奥多摩町を訪れたのは初めてのことだった。JR中央線から枝分かれした青梅線へ入ると、山の緑がぐっと近づいてくる。終点のひとつ手前、白丸駅で降り、青梅街道に沿って歩いていると、しゃくとり虫のイラストに「エミケン工房」と書かれた看板を見つけた。それが、佐藤さんの工房だった。

 神奈川県生まれの佐藤さんがこの奥多摩の地に移住してきたのは2001年のことである。

 「大学を卒業してすぐの頃は、精密測定器を作るメーカーに勤めていました」

 図面を引き、工場に渡し、出来上がった製品をチェックする。そんな仕事を3年間続け、平塚市にある職業訓練校に入り直した。

 「だんだんと自分で最後まで作りたくなってきちゃったんですよ」

 「会社はどうしたんですか?」

 「辞めました。だけど、そんなにすごい決意をしたという訳ではないんです。その時は、今ほど景気も悪くなかったですから、勤めようと思えばいつでも勤められるなくらいの気持ちでいました」

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