司法制度改革で弁護士人口を大幅に増やした結果、若手を中心に食えない弁護士が急増している。ただでさえ、法科大学院の学費など、資格取得にかかるコストも高い弁護士。今や「コスパの悪い資格」と言われる始末だ。(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)

年収100万円弁護士が語る
「バイト先の賄い飯がありがたい」

新人弁護士「年収100万でファミレスバイト掛け持ち」貧困の実態事務所に雇ってもらう「イソ弁」になれず、即独せざるを得ない新人弁護士が増えている。スマホ1本で仕事を取ってきて、顧客との打ち合わせは喫茶店やファミレス。弱者を救うはずの弁護士が、「経済的弱者」になっている時代だ(写真はイメージです)

「ファミレスのアルバイト収入で年収150万円でした。弁護士としての収入は100万円ないです。離婚調停を1件30万円で受けましたが、それが3件だけ。でも、その収入は弁護士会費と国民健康保険、貸与金や奨学金の返済に充てたのでアルバイトで食べています」

 現在、30代前半だという「ソクドク」の「スマ弁」が、その日常と収入をこのように語った。

 ソクドクとは即独、1年目からどこの事務所にも属さず独立した弁護士を指す。スマ弁とは、スマホ1本で仕事を取ってくる弁護士を指す業界用語。彼らの依頼人との打ち合わせ場所は、喫茶店やファミレスである。

 学生時代からファミレスでアルバイトをしているのは、「賄いの食事が出るから」(ソクドク弁護士)だと、屈託なく話す。

「一応、ソクドクでも所長というプライドは、1年目は持ってました。でも今は、弁護士としてのスキルも身につかないので、どこでもいいから雇ってほしいというのが本音です。法テラスのスタッフ弁護士とか企業内弁護士とか…、雇用が安定しているところに就職できれば、本当に弁護士としてやりたいこともできるのですけどね」

 こう語るソクドク弁護士は、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を目指したという。だが実際に弁護士になってみれば、食べていくだけで精一杯。少年事件に関わる余裕はないと話す。手弁当の弁護士も珍しくないほど、刑事事件は収入には結びつきにくいのだ。

 一方、弁護士活動をするには、相応のコストがかかる。

「委員会活動(各弁護士会で行われているテーマごとの委員会、人権、憲法、刑事などがある)、弁護士同士の勉強会、どれもカネは出ません。一方で、法律書ひとつ買うにもカネがかかります。図書館を活用するなどして節約していますが、それも限界があります。一度、廃業して、どこかに就職するにしても『弁護士資格』が災いして難しいのです」

 実際、このソクドク弁護士は、いくつかの企業に履歴書を送り、面接の申し込みをしたが、1社を除いてすべて門前払いだった。やっと面接に漕ぎ着けた1社では、「何か弁護士として問題を起こしたのでは?」と疑われて結局、採用には至らなかった。いくら文系最高峰の難関資格といえども、ただ弁護士バッジを持っているというだけでは一般企業への就職もままならないのだ。

「このまま、弁護士を続けていくにしても、依頼が増えなければ、年間50万円かかる弁護士会の会費を支払うだけで終わってしまいそうです。少年事件を手掛けるなんて“夢のまた夢”ですね…」