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お金がなくても自分の夢が叶う!?
普通の人に出資を募る「キックスターター」の潜在力

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第175回】 2011年12月21日
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 最近おもしろい製品やインターネットサービスを見るたびに耳にするのが、「キックスターター」という名前である。

 キックスターターというのは、一般の人々から資金を募って製品作りをしたり、作品作りをしたりするためのサイト。よく「クラウドファンディング」と称せられる類いのサービスだ。どんなしくみになっているのか、ともかくキックスターターのサイトを見てみよう。

 たとえば今、トップページを見てみると、「Tシャツ問題」という名前のプロジェクトが載っている。よく読んでみると、こんなことが書いてある。「Tシャツは、今やわれわれの大切な衣服の一部なのに、大量生産で生み出され、個性を表現するしくみがありません。どんなに目立つマークをプリントしても、4つの布の切れ端が縫い合わされているのはずっと同じで、19世紀の誕生時からまったく変わっていないのです」。

 「Tシャツ問題」の主唱者は、ドイツのベルリンが拠点だ。折り畳んでいくとTシャツになるという10のパターンを考案し、斜めに縫い目が入ったTシャツ、後ろが3枚の布に分かれているTシャツなどを作りたいという。なるほど、全体のシルエットはTシャツに間違いないが、さまざまな切替の縫い目があるせいで、非常に立体的でユニークなものに見える。サイトには、そのしくみを折り紙のように紙で説明するビデオが掲載されていて、その主旨がよく伝わる。

 「Tシャツ問題」実現に必要なのは、2万ドル。これで生産までできる。Tシャツにも何種類もの色違いが用意できるという。25ドル以上を投入した人々は、その額に応じた枚数のTシャツや特製ポスターを受けとったりするという交換条件付きだ。

 このプロジェクト、残り時間21時間の時点で、すでに93人の投資者から2万245ドルを集めて、プロジェクトは成立済みだ。ベルリンでは大層喜んで、さっそく布地を調達しているところだろう。

 プロジェクトは他にもいろいろある。映画を作りたい、ソロ・アルバムを出したい、iPadのアクセサリーを作りたい、本を出版したい、こんな食べ物を作って売りたい、などなど。これを見ていると、クリエイティビティーとアイデアの宝庫という感じだ。どれも1~60日間にわたって資金をここで集めて、十分に集まればプロジェクトがスタートとなる。

 ここから生まれた有名な製品やサービスには、こんなものがある。「ルナティック」と「ティックトック」というのは、iPodナノを固定してマルチタッチ腕時計として使えるようにするためのバンド。ランナーが腕につけているようなスポーツ仕様ではなく、オフィス街でつけていてもおかしくないような美しい金属とプラスティック素材製である。このアイデアを考案したデザイナーが求めた資金は1万5000ドルだったが、これに94万2600ドルほども集まった。何と、1億円にも届くかというような金額は、当初希望していた金額の63倍以上である。資金を募ったデザイナーは有名になったばかりか、すでに次のプロジェクトに邁進中だ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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