長年引きこもり状態にあり、「統合失調症」と診断されていた当時38歳の男性が2007年6月、北見赤十字病院に入院した。しかし、約1週間後に心肺停止を起こし、翌年3月に死亡した。主治医は、後期研修医だった。

 なぜ男性は死に至ったのか――。

 その原因は、多剤多量投与によって、中枢神経が抑制され、呼吸停止したことにあるとして、北海道内に住む両親のAさん夫妻が、主治医と病院を相手に、民事訴訟を起こしている。

 多剤多量投与に頼りがちな精神医療体制に疑問を投げかける遺族のAさん夫妻に今年8月、インタビューしているので紹介したい。

「僕は狙われている」「壁から雑音が…」
統合失調症で入院、そのまま引きこもりへ

 当時38歳だったAさん夫妻の次男が、最初に体調を崩したのは、大学6回生のときのことだ。

「身体の調子がおかしい」

 そんな電話が、下宿先でひとり暮らしをしていた次男からたびたびかかってくるようになった。しかも、「首にしこりができている」などという不可解な症状だ。

 Aさんが「帰ってこい」といくら説得しても、次男は「大学の研究があるから、休めないんだ」という。

 そして、ようやく帰宅した次男は、実家近くの病院へ行って、念のためMRIなどで検査してみた。しかし、とくに異常は見つからない。

「そんなことないんだけどなあ」

 次男は首を傾げながら、再び大学へと戻っていった。

 1週間くらい経って、心配したAさんの妻が、下宿先の次男の様子を見に行った。異変に気づいたのは、レストランで食事をしているときだ。次男は「僕は狙われている」「壁から雑音が聞こえて、勉強できない」などと、妄想の症状が出ていた。