日本の12倍以上という市場規模を持つ中国。日本の文化や商品に理解が深く親日的な台湾。EC(Eコマース)で海外進出を目論むとすれば、漢字文化圏で距離も近い二つのエリアは参入しやすそうに映る。だが、いずれも日本とは異なる成長過程をたどったマーケットであり、日本流にネットショップに品物を並べるだけでは成功は望めない。まず必要なのは、マーケットを知ることである。キーワードはSNSだ。(文/ECのミカタ)

 2016年における中国のEC市場規模(物販)は9276億米ドルで、日本円に換算すると90兆円を超える規模となっている。日本のEC市場規模は774億米ドルだから、実に12倍近い。この巨大なマーケットに当然、多くの日本企業が注目しているが、中国においては一般的に日本製品に対する信頼感が高いことなどから、多くの企業は現地に拠点や法人を設立せず、商品だけが国境を越えていく「越境EC」を軸とした戦略を採っている。

「そこに胡坐をかくわけではないのでしょうが、きちんとしたマーケティングやPR活動を行わずに失敗するケースも少なくありません」と語るのは、アリババ・マーチャント支援部オペレーションマネジャーの木村良子氏だ。では、どのような点に注意するべきなのか。

 日本ではPCを使ったECからスタートし、スマホ対応が進んでいったという発展過程がある。しかし、中国ではいきなりスマホが爆発的に普及し、同時にSNSが浸透している。SNSによる情報接触やEC活用は日本以上に浸透しており、国境を越えたショッピングも、「近くの農家から新鮮でいい野菜を買うのと変わらない感覚。当たり前のショッピング行動」(前出・木村氏)であるという。

 そんな中国の顧客に訴える商品とは何か。「日本からの越境ECのターゲットは主に20代、30代の女性層です。彼女たちが購入するのは、友だちに自慢したくなるような商品、持っているとワクワクするような商品、SNS映えする商品です」と前出・木村氏は語る。

アクティブユーザー9億人以上!
会話も決済もこなす「WeChat」

 中国版のLINEとも呼べる「WeChat」への対応も必須となる。「WeChat」の月間のアクティブユーザー数は9億人以上と、きわめて大規模なSNSツールである。訪日した中国人観光客は、ショッピングをはじめとするさまざまな日本の情報を「WeChat」から入手しているという。

 なかでも注目すべきは『WeChat Pay』という決済機能だ。コンビニエンスストアなど店頭での支払いはもちろん、タクシーや公共料金、病院の支払や映画のチケット購入などでも利用されている。「『WeChat Pay』で一気に利便性が高まりました。今ではもはや中国人の生活インフラとして定着したといっても過言ではありません」(インタセクト・コミュニケーションズ営業統括部部長・塔筋栄作氏)。