インハウスからBTMへ
アウトソーシングの動き


  海外出張の多い企業で、これまで出張業務を手がけてきたのは、主にインハウスと呼ばれるグループ内の旅行会社だった。最近は、親会社の経営上の理由からインハウスを廃止し、BTM会社に出張業務をアウトソーシングする企業が増えているという。

「背景にはコンピュータシステムの進化もあります。かつて航空会社はノーマル航空運賃で発券し、安くする部分を割り戻し(払い戻し)するという二重の操作を行っていた。その払い戻される割引率の不透明さが、インハウスの収入源となっていた。ところがネット精算が可能となり、運賃精算の透明性が進んだ結果、その収入の道が途絶えた。さらに現在は、航空会社自身がエイベックスという格安航空券を直接発券できるようになり、旅行会社を通して航空券を買うメリットも減ってしまった。インハウスの経営そのものが赤字となり、本業の負担になるケースが出てきたのです」

  もとよりインハウスは、本体業務の経営悪化による整理や見直しを受けやすい立場にある。インハウスは今その存在価値があらためて検証され始め、企業は付加価値の高いサービスを多く持つBTMの専門会社と業務提携、あるいはアウトソーシングすることで、出張業務をより効率的に行おうと考え始めているのだ。

   また海外出張の多い企業だけでなく、最近はグローバル展開を図る中小企業へのBTM導入も注目されている。スケールメリットを享受できる共通のプラットフォームを用意するBTM会社もあり、出張規模が小さくてもコスト削減が可能になるほか、世界的なネットワークを利用することで、危機管理等を併せたスムーズな出張業務が実現するからだ。

グローバル化が進むなか
海外出張は避けられない


  どれほどの情報化社会になっても出張業務はなくならない。むしろグローバル化が進むなかで、海外出張の重要性は今後ますます高くなると北村准教授は指摘する。

「実際に海外に出かけてフェイス・トゥ・フェイスで人と交流することは人脈を構築するうえでも大きいし、次回以降のビジネスへの啓示を受けることも多い。また交流することで異文化に対するセンスも身に付けられ、ビジネスマンとしての資質向上にも繋がる。こうしたことは、メールやテレビ会議等では絶対に実現できないことなのです」

 東日本大震災があった昨年も、時期的に凹凸はあったが、マーケット全体として海外出張の数は減っていないという。市場規模としては、2007年度の統計になるが、国内旅行会社の海外旅行の年間取扱金額は3.75兆円、そのうち海外へのビジネストラベルが約1兆円と推定されている。この金額は95年当時と変わらず、今後も「海外出張は増えることはあっても、減ることはない」と北村准教授は推測する。

 少子高齢化が進みシュリンクする国内市場にあって、日本企業のグローバル化は避けられない状況になりつつある。BTMの導入は、そんな時代における出張業務の大きなアドバンテージとなり、さらには企業にとっての強力な武器になるはずだ。

出張旅費の削減策は、「回数券やディスカウントチケットの利用」というオーソドックスなものが、「回数・人数の削減」「テレビ会議などによる代替」を上回る