『週刊ダイヤモンド』2月10日号の第1特集は、「企業も個人も生死を分けるAI格差」です。AI革命によるリストラがにわかに進み始めました。3メガバンクが3万人超の削減を打ち出し、損保大手も営業事務の9割自動化を決めました。日本企業のAIサバイバルがいよいよ本格的に始まったのです。個人も際限なき格差拡大の危機にさらされています。企業も個人も、あらがいようのないAI革命に対応できるか否かで生死を分ける「AI格差」時代の到来です。

 今後、AI化が一気に進みやすく、潜在的にリストラの可能性が高い企業はどこなのか。そこで『週刊ダイヤモンド』のデータ分析担当の小島健志記者が東証1部上場企業を対象に、定量的なデータを基にAI化スコアを作成、「AIリストラが進みやすい上場企業ランキング」を初算出した。

 「AIを通じて、顧客の要望を予測できる車内のパーソナルアシスタントにしたい」。今年1月、米ラスベガスの家電見本市「CES」において、トヨタ自動車の豊田章男社長はこう言って、AI化を宣言した。実際、副社長格に米AI研究会社トヨタ・リサーチ・インスティテュートのギル・プラットCEOを招聘し、一気にAI化を図ろうとしている。  

 AIロボット化を推し進めるのは、トヨタだけではない。メガバンクや通信大手など、こぞってかじを切っているのである。AI革命は人が要らなくなる革命であり、ビジネスマンであれば、その進展によって「仕事が奪われる」という可能性を覚悟しなければならない。

 では、AIロボット化が進みやすく、潜在的にリストラの可能性が高い企業はどこなのか。本誌では、東証1部上場企業2065社を対象に、定量的なデータを基に「AIリストラが進みやすい企業ランキング」を初算出した。

 詳細は本誌をご覧いただきたいが、まずAI関連キーワード(AIやRPA、深層学習など9単語)を定めた。そしてこの1年間において、それぞれの単語に関連する記事が企業ごとにどれだけ出たのかを調査。記事が多ければ多いほど、AIロボット化に関する取り組みが進んでいると分かる。

 次に、そのトップ300社に絞って社長・会長の影響力を数値化した。AI化には内部からの反発が予想される。それを承知で推進できるのは、在任期間が長く強い影響力を持つ社長か、持ち株比率の高いオーナー的経営者の存在が欠かせない。実際、AI化ができているのは、トップが強い権限を持ったオーナー系企業が多い。日本IBMの久世和資最高技術責任者は「オーナー企業には新しいことをやる土壌があり、改革が進んでいる」と指摘する。

 また、従業員数が多いところこそがAI化の余地があると想定した。さらに稼ぐ力(EBITDA=利払い前・税引き前・減価償却前利益)も加味して、実際に投資までつなげられるのかを考慮した。

 これら5指標を偏差値化して合算、「AI化スコア」として算出した。下表はその上位10社のランキングである(『週刊ダイヤモンド』2月10日号には上位240社を掲載)。