人間は必ず失敗する。しかも同じような失敗を繰り返す。自分のミスをきちんと知識化、教訓化すれば、ミス再発を防ぐだけでなく、質の高い仕事を生み出す。本連載では、失敗学の権威・中尾政之東大大学院教授の新著『図解 なぜかミスをしない人の思考法』の中から、失敗の予防法を“科学的”視点から解説する。今回は、マニュアル無視が命取りとなる、「自信過剰」のワナについて。

自己流の「裏技」は
副作用の事故を引き起こす

 想定外、予想外のことをするのは、なにも子どもだけではなく、大人の世界でも少なくない。「このほうがやりやすいから」と正規マニュアルを無視して、いつの間にか勝手に自分の「裏技」を優先してしまう。やりやすくて同じ効果があるのだから、作業のカイゼンとすら考えてしまう。これが失敗につながる。

 たとえば、自動車の中をきれいな“居住空間”にするために、土足禁止にし、靴をはかずに運転する若者は多い。

 しかし、急ブレーキを踏むときの衝撃は大きいので、靴をはかないと強く踏めない。サンダル、つっかけ、スリッパをはいて運転する人も多い。そして疲れるとサンダルを脱いで素足で運転する。このとき、もしもサンダルがブレーキペダルの下にあったら、踏んでも利かなくなる。

 こういった想定外の使用法による失敗が起きても、単なる不幸なヒューマンエラーと考えるかぎり、失敗は永遠になくならない。カイゼンの副作用まで考え抜くべきだ。

 自己流の裏技的カイゼン作業をするときそこに「科学の目」はまったくない。