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御手洗氏の社長再登板はキヤノンを救えるか?
“ベテラン力”依存の日本企業に見る世代交代の危機

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第212回】 2012年2月7日
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カリスマの強みかリーダー育成の失敗か
賛否両論ある御手洗冨士夫氏の社長復帰

 1月下旬、わが国を代表する優良企業のキヤノンは、内田恒二社長が相談役に退き、後任として経団連会長の要職を務めた御手洗冨士夫・会長兼CEOが社長を兼任する人事を発表した。

 今回の人事の背景には、歴史的な円高や欧州経済危機など不透明な経済環境の中で、同社の業績の伸び悩みの懸念が高まっていることがある。今後キヤノンは、2006年まで社長を務め、不採算部門からの大胆な撤退などを陣頭指揮した御手洗氏の“ベテラン力”の下で、事業の拡大を目指すことになる。

 この人事には様々な見方がある。これからの厳しい経営環境を考えると、キヤノンを知り尽くした御手洗氏の陣頭指揮が必要との意見がある一方、1995年から11年間にわたって同社の社長を務め、その後経団連の会長まで務めた長老が、再びトップに立つことには「弊害もある」との冷ややかな意見もある。

 今回のキヤノンのトップ人事について、見逃せないポイントが2つある。1つは、御手洗氏自身のカリスマ性、あるいは“ベテラン力”という個人的な属性だ。

 企業経営者には、どうしても強力なリーダーシップが必要である。御手洗氏はそうした属性を有しており、キヤノンという企業はそれを必要とした。逆に言えば、キヤノンという企業は、御手洗氏の個人的な能力を必要としたのである。それが、今回の異例とも言える人事を実現させた。

 もう1つは、キヤノンが御手洗氏に代わる経営者候補を育てることができなかったことだ。おそらく、こちらの要素の方がはるかに重要だろう。

 わが国を代表する有力企業で、76歳の元経営者を復帰させるということは、若い経営者候補を育成することができなかったことを意味する。その意味は大きい。企業は一般社会と同じように、スムーズな世代交代を経て新しい時代が開かれる。いくら発想が若くても、“昔の人”が残っていると、時代の流れに合った経営はできにくいものだ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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