運転手を悩ませる渋滞。車がなかなか進まないとイライラは募るばかり。さらに言えば、渋滞が事故を誘発しかねずリスクも高い。できればストレスのないスムーズなドライブをしたいものだが、そもそも渋滞は、なぜ発生するのだろう。ドライバー1人の心掛けで、渋滞を緩和させることはできるのか。「渋滞学」の第一人者・東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授に聞く。 (フリーライター 末吉陽子、編集/清談社)
「渋滞学」第一人者が分析する
渋滞発生の元凶とは?
一般的に、渋滞とは「車の移動スピードが遅くなっているイメージ」、つまり、「速さ」で定義しがちだが、これは渋滞の本質を理解するうえで正しいとは言えないようだ。
「渋滞は、いわゆる交通量調査で測るデータで捉えることが適切です。混んでくると、定点を通過する交通量はゼロに向かっていくことになります。つまり、車間が短いと、自動車の走行スピードが遅くなり、交通量が減るわけです。では、ちょうどいい車間距離はどれくらいかというと、ベストなのは40mであることが分かりました」(西成教授、以下同)
つまり、高速道路も一般道路も、40mよりも距離が詰まっている状態が「渋滞」といえるのだという。
では、そもそも自動車の自然渋滞が発生するのはなぜなのか。西成教授は「減速・発進が続いて、その振れ幅が大きくなっていくこと」と分析する。
「データを見ると、渋滞のほとんどは追い越し車線から発生します。ある車が追い越し車線に割り込むと、後方の車にブレーキを踏ませてしまいます。割り込みが複数台続いて、ストップアンドゴーを繰り返すことで、“ブレーキのバトンを渡している状態”になるんです。早く進むために追い越し車線に自動車が集まると、よりブレーキが踏まれやすい環境になり、追い越し車線が渋滞してきて、車間が縮まってしまうのです」
以前、東名高速で発生した約40kmの渋滞を調べたところ、たった1台の車の車線変更が原因だったことが判明。あまりにも急に割り込んだため、後方の自動車が続々とブレーキを踏んで、長距離渋滞につながったという。
「これは極端な例ですが、どこかで車間距離が40m以上空いていれば、ここまでの渋滞にはならなかったと考えられます」
前の車が時速5km減速したとすると、後方車が5km減速、さらに後ろで5km減速…といけばまだいいが、5kmの減速で後方の車は強くブレーキを踏むかもしれない。すると結果として、速度が10km、次の車で20kmと、減速の幅が倍に広がってしまうという。