介護保険制度改正で政策迷走、30年前の映画を見れば原点が分かる

古今東西の映画を通じて、社会保障制度の根底にある考え方や、課題などを論じていく連載「映画を見れば社会保障が丸わかり!」。第5回は、介護保険制度を考える原点として、1985年製作の『花いちもんめ』、1986年製作の『人間の約束』を取り上げます。(ニッセイ基礎研究所准主任研究員 三原 岳)

4月から介護保険制度改正
「自立」支援のための予防強化

 2018年4月から「介護保険制度」が変わります。政府の説明によると、高齢者の「自立」を支援するため、リハビリテーションなど介護予防の強化を通じて、介護を必要としない状態に改善することを目指すそうです。2018年度政府予算案では、高齢者の状態を改善させた市町村に対し、“ご褒美”として200億円を渡す交付金も計上されています。

 同時に、介護の公定価格である「介護報酬」も変更されます。介護サービスを提供する会社や施設に対する報酬の単価、基準などが変わり、ここでも「自立」支援に向けた、リハビリテーションの強化などが盛り込まれています。

 こういう風に書くと、「自立支援とは高齢者を元気にするのか、いい政策ではないか」と思われるかもしれません。しかし、介護保険制度が目指していた「自立」は本来、違いました。2000年に制度が創設されたときには、高齢者自らがサービスや生活環境を選択することを通じて、「尊厳」が確保されることを「自立」と理解されていたのです。