「これまで補聴器には“ダサい、格好悪い”という固定的なイメージがありました。その印象を変えたかったのです」。補聴器メーカーのマキチエ、平松知義社長の言葉だ。
同社が新しく開発した耳かけ型補聴器の新製品「Heart(ハート)」は、イヤホンのように見える細いチューブ状デザインで従来の補聴器のイメージを刷新。使う楽しさと安心を両立させるため、デザインだけでなくサポートの在り方にも工夫を凝らした。
販売名「耳かけ型補聴器マキチエハート」(左)。イヤホンのような美しいフォルムの本体で、スマートフォンの音声・通話・通知音をストリーミングするBluetooth®を搭載。ファッションの一部として身に着けられる(右)。内蔵充電池は約27時間連続使用が可能。約3回分の充電ができる充電ケースが付属する
ボディーカラーは12色。色名に「白磁」「漆黒」といった伝統の色名を使うことで、手に取る人に親しみと上質感を覚えてもらえるようにした。「カラーバリエーションを増やすことで、補聴器を単なる道具ではなく、アクセサリーのように前向きに身に着けられる存在にしたいと思いました」。こうした発想が補聴器に新たな価値を与えた。
ボディーカラーには「白磁」「漆黒」「金春」「京紫」などの12の伝統色を採用。上質感や親しみを感じてもらうことが狙いだ
AIと人が実現する
24時間サポート
製品名の「Heart」には深い意味が込められている。
「心に光を射すのは目だと思っていますが、心を揺さぶるのは耳だと思います。H-E-A-R-Tというつづりには、HEART(心)、HEAR(聞く)、EAR(耳)、ART(人工物、芸術)の全てが含まれている。そこで心にきこえを届けるモノの中で、最高のものを目指したいという思いを込めました」と平松社長は説明する。
「Heart」では、専用のスマートフォンアプリが用意されており、AI(人工知能)によるユーザーサポートも導入した。AIが基本的な質問に24時間即時対応する一方で、より深い相談や調整は専門知識を持つ補聴器相談員が引き継ぐ仕組みだ。「AIと人が協力し合うことで、患者さまにとってより安心できるサポート体制を整えました」。これは自社で初めての試みだ。
医療機関との連携で
実現する聴覚ケア
平松社長は補聴器の本質をこう語る。
「補聴器は聞くためだけの機器ではなく、話すための機器なのです。その先には、人と人との絆が生まれます。聞こえが悪くなったことで関係が途切れるようなことは、決してあってほしくないと思っています」
高齢になると、聴力の低下から家族が大声で話すようになり、会話が必要最低限に減ってしまうことも多い。「そうならないように、補聴器の大切さ、そして正しい知識をもっと広めていきたい」(平松社長)。
2026年、同社は補聴器のみならず聴覚検査機器の取り扱いも本格的に開始する予定だ。「これにより、患者さまのきこえを支える企業として医療機関との信頼関係を基盤に『きこえ』の分野においてより幅広いサポートが可能となる」と平松社長は語る。社長が医療機関との連携を重視するのには理由がある。
「難聴は医療的ケアが必須で、補聴器は医療機器です。最も適切に提供できる場所は、医療機関しかないと思っています。医師が診断して治る難聴なら治療を優先し、慢性的な難聴で補聴器が適応と判断されたとき、ようやく私たちの出番です。
加齢性難聴は徐々に進行します。補聴器の使用は、単に音を大きくすればいいのではなく、脳が音に慣れていくトレーニングが必要です。最も大切なのは医師と連携することです。医師の指導の下効果的なスケジュールを立て、患者さまへの説明と同意を共有して補聴器を届けています」(平松社長)
同社は、補聴器の販売をモノの取引ではなく、聞こえの状態を長期的に支える「聴覚管理サービス」として提供する方向へかじを切っている。
「レンタルとは異なり、聴覚ケアそのものに月額で価値を感じていただくサブスクリプションを本格的に進めたい。モノを売るのではなく、聞こえを守るサービスを届けたい。その方が、患者さまにとっても当社にとっても、より持続的な関係が築けると思っています」(平松社長)
早い人だと聴力の衰えを自覚するのは50歳前後だという。平松社長は続ける。
「今は70歳ぐらいで初めて補聴器を使う方が多いのですが、理想はもっと早い時期です。日常生活で聞き取りにくいことがあれば、何歳でも早過ぎるということはない。聴力低下が進行する前に慣れていくことが、補聴器を使いこなす上で大切なのです」
若い世代の感性に響くビジュアルで、補聴器の未来を見据えたブランドメッセージを発信
平松社長は、聴覚のケアを体のメンテナンスの一環として生活の中に取り入れてほしいと考えている。その思いの根底には、「補聴器」という言葉への深い誇りがある。
「補聴器の『補う』という言葉は美しい。そこには支え合いの精神があるからです。だから私は、補聴器という言葉を大切にしています」(平松社長)
補聴器と名乗るには医療機器として厳しい規制をクリアしなければならず、同社は、その名にふさわしい製品作りを続けている。
しかし、現実には課題も残る。日本の補聴器普及率は難聴者の15%程度(出典:「JapanTrak 2022」)であり、平松社長は強い危機感を抱いている。「聴力の悩みがあっても、補聴器を使うことをためらう人がまだ多い」。だからこそ、「誰もが当たり前に補聴器を使う社会をつくりたい」と力を込める。
25年に創業80周年を迎えた同社は、売り上げ前年比115%を達成。30年には100億円規模を見込む。「今後も聴覚ケア一本で勝負したい。一つのことに専念してこそ、本当の価値が生まれると思っている」と平松社長。そして100周年に向けた同社の目標は、「聞こえ」を文化として根付かせることだ。
聞こえを大事にする社会は、人の声を大事にする社会。人の声を大事にする社会は、人の心を大事にする社会。補聴器の普及を通じて、人と人との絆を守り、コミュニケーションの豊かさを次世代に受け継いでいく。マキチエの新製品「Heart」は、その実現への第一歩である。
※補聴器・耳鳴マスカの使用をご希望の方は、あらかじめ耳鼻咽喉科専門医の診察を受けられることをお勧めいたします。
※補聴器・耳鳴マスカは使用開始前に適切なフィッティング調整が必要です。
※補聴器・耳鳴マスカは適切なフィッティング調整により、その効果が発揮されます。しかし、装用者の聞こえの状態によっては、その効果が異なる場合があります。
※ご使用の前に添付文書および取扱説明書を必ずご参照ください。
