東京六大学野球奪三振記録、新人王、MVP、最多勝、最高勝率…。しかし、福岡ソフトバンクホークス現役エース・和田毅は、決して体格に恵まれていたり、天才的なセンスや嗅覚があるわけでもなかった。「ふつうの野球少年」は、なぜここまで来られたのか? 球界きっての「思考派」が自ら語る連載「練習について僕が思うこと」の第4回! 今回のテーマは「過去のデータにどう向き合うか」。(構成/田中周治 写真/繁昌良司)

プロ11球団が導入、「弾道測定器」のデータと投手はどう向き合うか

弾道測定器「トラックマン」が野球を変える

「野球は数字のスポーツ」と言われている。

 打率、打点、防御率、奪三振数…選手がプレーした結果が数値として表され、その積み重ねがデータとなるわけだ。このデータが、近年の野球で非常に重要視されていることは、多くの野球ファンの方がご存じだろう。

 プロ野球選手の中には、データにそれほど重きを置かない感覚派もいるが、僕はどちらかと言えばデータを重用しているほうだと思う。試合の前には必ず、相手チーム──僕の場合はピッチャーなので、相手打者・打線──のデータを頭に入れて試合に臨むようにしている。

 このバッターは初球からスイングしてこない。このバッターには前回、このカウントでこの球種を打たれた。最近の5試合で調子がいいのは、このバッターだ。スコアラーからもたらされるそうしたデータを基に、試合ではキャッチャーが配球の組み立てをしてくれるが、僕もピッチャーの立場として一応、ある程度はデータを共有するようにしている。