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韓国を代表する財閥のサムスン。中核のサムスン電子は2011年12月期の連結売上高が過去最高の165兆ウォン(約11兆円)となるなど、スマートフォンが牽引し本業は絶好調である。ところが、足元の韓国国内においては、暗雲が垂れ込めている。
韓国では、今年4月に総選挙、12月に大統領選挙が行われる。「政治の年」として、すでに財閥バッシングも始まっている。与党も野党もこぞって「格差是正」と、大企業への増税や財閥への規制強化を打ち出してきた。サムスンは格好のターゲットとなる。
最近、サムスン創業者の長男である李孟熙(イ・メンヒ)氏が三男の李健熙(イ・ゴンヒ)・サムスン会長を相手取り、遺産の一部を渡すように訴えたのも、サムスンにとっては頭の痛いところだ。この「御家騒動」によって、財閥の世襲にあらためて関心が集まることになったためだ。李健熙会長にとっては、サムスン電子のCEOを自分の長男(現在はCOO)に譲るのが既定路線である。
サムスンも財閥批判の火消しに躍起になっている。1月には、李健熙会長の長女が社長を務める新羅ホテルが子会社で運営していたベーカリーカフェの撤退を決めた。「財閥が零細な個人事業者であるパン屋を圧迫している」との批判に配慮したといわれる。
英「エコノミスト」誌は2月11日号で「コリアディスカウントの最も大きな原因は、北朝鮮ではなく、前近代的な財閥の企業支配構造」と論じた。韓国国内では「財閥はウォン安を享受している一方、韓国経済の牽引にはつながっていない」(ジャーナリストの池東旭氏)との不満が根強い。サムスンにとっては、頭の痛い選挙の年になってきた。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)