ゼロ金利が示す「資本主義の終わり」は、決して悪いことではない

1999年にいわゆる「ゼロ金利」政策が始まって以来、多少の変動はあっても、20年近くにわたってゼロ金利が続いている。2016年には民間銀行が日銀に持つ当座預金の準備預金金利をマイナスにするという政策がとられた。将来に向けて「資本」を増殖させ、その「資本」によって経済を成長させる「資本主義」で、資本の価格がゼロというのは何を意味するのか。資本主義の大きな変質が起きていると考えるべきだろう。(社会思想家、京都大学名誉教授 佐伯啓思)

将来の期待収益が低下
資本主義の成長力、限界に

 企業が投資をする際の資金調達コストは、長期の実質金利に依存する。

 長期の実質金利は、政策金利に代表される短期金利から物価上昇率の期待を差し引いたものと見てよいから、物価上昇率の期待がマイナス、つまりデフレが続くとみなされれば、仮に政策金利がゼロでも実質的にはプラス金利になる。

 だから実質金利をゼロまで落とそうとすればマイナス金利政策をとることもあり得る。

 だが理屈はそうだが、これは異常な事態というほかない。

 日銀は民間銀行が日銀の口座に金を積むことに対して「罰金」を科していることになる。それほどまでに、民間の資金需要が弱いことになる。