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高橋洋一の俗論を撃つ!

エルピーダ破綻とAIJ事件
日銀のデフレ・円高が招いた悲劇

高橋洋一 [嘉悦大学教授]
【第34回】 2012年3月8日
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 エルピーダ破綻とAIJ事件、ともに日本を揺るがした大事件だ。それらの原因は複雑であるが、ともに円高・デフレによる低金利が一因となっている。この意味で、日銀の無策の被害者である。

エルピーダ破綻の
最大の要因は円高

 エルピーダメモリは、2月27日、会社更正法の適用を東京地方裁判所に申請した。同社は、2009年6月、産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)の適用を受け、公的資金300億円、政府保証融資100億円を受けていた。

 27日の記者会見でも坂本幸雄社長の発言は衝撃的だった。「為替については、リーマンショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。70%の差は、テクノロジーで2世代先に行かないとペイしない。為替が、完全に競争力を失わせている。70%の差はいかんともしがたい。それを除けば、エルピーダのDRAMの損益は圧倒的にいい。為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれないほどだ」。

 当事者にとってみれば、円高は避けることができない災害だ。筆者はパソコンを自作するので、エルピーダのモジュールを使ったメモリをよく使う。メモリは汎用品であまり製品差別化をできないが、エルピーダのものは品質がよくパソコン自作につきものの相性問題が少ない。それでも、そうした技術力に差があっても、円高になると一気に吹っ飛ぶのだ。

 半導体に限らず、日本のものづくりの技術水準は高かったが、それを生かすも殺すも為替レートである。価格競争力がなければ、技術をアピールすることもできなくなる。最近、韓国企業が好調というのも、ウォン安政策によるところが大きい。

 名目円レートでなく実質実効円レートで円高でないという話をする人もいる。しかし、これは、デフレの中で一般物価と同じペースで名目円レートもデフレ(通貨価値の上昇=円高)になっているということだ。そんな話は、円高で倒産した者にとってはなんの慰めにもならない。

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高橋洋一[嘉悦大学教授]

1955年、東京都に生まれる。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。主要著書に『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)、『さらば財務省』(講談社)など。

 


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