総合商社かトヨタか 資本増強の有力候補

 MRJがエンブラエルよりも優位に立てるかどうか。MRJの競争力の有無は、三菱航空機の資本政策にも影響する。開発費がかさむ三菱航空機は17年3月期時点で510億円の債務超過に陥っており、資金の手当てが不可欠なのだ。

 型式証明を取得できたところで、MRJにはまだまだ金が掛かる。カスタマーサポート体制を確立する必要もあれば、新型機に付きもののトラブルにも対応していかなければならない。「事によると数千億円必要。さすがに全てのリスクを三菱重工一社で負うことはできない」(前出の三菱重工幹部)。

 三菱航空機の株主の中では、三菱商事などの商社はMRJが優勢ならば一枚かんでおこうと色気を出す公算が大きい。

 未来を見据えれば、トヨタ自動車による増資もあり得る。「空飛ぶタクシーじゃないですが、陸と空のモビリティーは今後大きく変わると思いますから。そのときがチャンスだと思っているんですよ」。宮永社長がこう語るように、MRJの開発ノウハウは未来のモビリティー開発に役立ち得るのだ。

 MRJは、三菱重工が今後の成長戦略を描けるかどうかの試金石となる事業だ。MRJが難局を乗り切り、安定的な収益源となるためには、三つの力の合わせ技が求められる。多段階にわたるサプライヤーをまとめ上げる統率力。大規模プロジェクトを工程ごとに管理するマネジメント能力。そして、世界のトップ企業や政府・当局と渡り合える交渉力である。

 これらは三菱重工の大問題である火力発電事業や商船事業はもちろん、その他の全事業のグローバル競争力をも決める。世界で戦い抜けるよう、組織を抜本的に改革する。宮永社長による改革の最終目標は道半ばだ。三つの力を磨き、内弁慶体質を返上できるか。宮永社長の最後の戦いが始まった。