パンは意外に「塩分」が多い、世界32ヵ国・地域調査で判明

 今どき3食ともパンが主食という人は少なくない。そこで気をつけたいのが塩分だ。

 英国の減塩推進団体にルーツを持つ「塩と健康に関する世界行動(WASH)」が世界32の国と地域で流通する食パン──白パン、全粒.混粉パン、ナン、ピタパンなどの平たいパンを調査した結果、100グラムあたりの塩分含有量が最大2.65グラムもあったのだ。これは海水の含有量に匹敵する。

 日本からは普通の小売店で買えるおよそ70種類が調査対象になった。日本のパンで最も含有量が高かったのは、バターロールの中にあらかじめマーガリンが入っているタイプで、含有量は100グラムあたり1.57グラムだった。

 マーガリンが「イン」してあるパンの塩分が高めなのは当然として、普通の食パンの場合は100グラムあたり0.53~1.39グラムだった。日本の規格で考えると、パン1斤(340グラム)の塩分含有量は1.8~4.7グラムといったところ。

 1斤6枚切りの食パンを1食2枚食べるとすれば、主食のパンだけで意外な量の塩分を摂ることになる。バターやマーガリンを塗ればさらに増えるわけだ。

 英国ではWASHの前身である「CASH(塩と健康に関する国民運動)」の提案で、国を挙げて段階的にパンの塩分含有量を減らしてきた。現在、パン100グラムあたりの塩分量は1グラム前後に抑えられている。数年かけた減塩だったため、懸念された消費者からのクレームもなかった。

 今更だが塩分の摂り過ぎは、加齢に伴う血圧の上昇を加速させる。高血圧は脳・心疾患リスクであり、寝たきり要因でもある。健康寿命を延ばすには減塩が望ましいのだ。

 適正な血圧を維持する塩分摂取量は世界保健機関が推奨する1日5グラムまで。現行の「日本人の食事摂取基準」では、成人男性が1日8グラム、女性は7グラムである。

 現代和食は減塩が定着しつつあるが、洋食は意外に盲点だった。ましてパン食のお供は塩分が高いソーセージやハムなど加工食品が多い。高血圧を指摘され「イキナリ減塩」を強いられないよう、パン好きは意識して塩分控えめを心がける必要がありそうだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)