今回の騒動は、成長著しい中国で自社製品の販路拡大を狙う各国企業に、「他人事」とは言えない大きな不安を持って受け止められた。訴訟の報道が増えるにつれ、中国の主要都市にある家電ショップからは、軒並みiPadが撤去された。アップルにとって、この状況はあまりにも厳しい。

 もし自社が中国で同じ目に遭ったら――。中国依存度が高い日本企業の関係者の中には、今回の騒動に不安を覚えている人も多いだろう。

 いったい、なぜこのような事態が発生したのか。今回の事件を教訓に、我々はどんな認識を持つべきか。企業の足もとに忍び寄る、中国の商標権問題について考察してみよう。

実は中国ばかりではなかった?
「先手必勝」の登録主義に見る落とし穴

 そもそも商標権とは、知的財産権の一種で、企業などが製品やサービスに特定の名称を付けて、独占的に使用することができる権利のことだが、その考え方は国によって異なる。

 ファーイースト国際特許事務所の弁理士・平野泰弘氏は、「国家によって商標権の権利発生の根拠が、商標を使用している事実を重視する『使用主義』と、商標を使用している事実をそれほど重視せず、一定の要件を満たせば登録できる『登録主義』に分かれていることが、騒動の原因の1つ」と指摘する。中国では、後者の「登録主義」を採用していることで、トラブルが多く生じているという。

「登録主義は、同じ権利内容の商標権について、最初に手続きをした者に商標権が与えられるので、先に出願した者に権利を与える『先願主義』とも呼べる立場をとっています。登録主義では、最初に誰が特許庁に手続きをしたかが明確なので、誰が権利者かを争う必要がない。一方、米国は使用主義の立場をとっており、『使用している事実』の方に重きを置いているため、中国の『登録主義』と真っ向から対立してしまう。すでに世界的な認知を得ているiPadが訴えられている状況は、こうして発生しているのです」(平野氏)

 言うなれば、登録主義の国における商標権の扱いは「先手必勝」だ。自社の商品やサービスのネーミングに関わる商標権を先に取られてしまうと、それを取り戻すには多大な労力、時間、お金がかかってしまう。