毎年恒例の公示地価が3月下旬に発表された。名古屋市の不動産は引き続き上昇傾向にあるが、今回の上昇率上位のアドレスを見ると、ある傾向がうかがえる。併せて、名古屋市内でも「穴場」といえる路線や駅についても考えてみた。

加藤剛司
かとう・こうじ/エステイトアクティフ代表取締役兼代表執行役社長。東海高校、早稲田大学法学部卒。名古屋テレビ放送勤務を経て、現職。名古屋の不動産事情に精通、不動産の総合コンサルタントとして顧客の資産形成に寄与している。

 地価公示上昇率名古屋圏上位で、商業地の1位になったのが「名古屋」駅太閤口に近い椿町(中村区)です。2位の名駅2丁目(同)ともども、リニア中央新幹線の関連での地価上昇が続いています。

 最近では、高くなり過ぎた名駅周辺から、相対的に割安感の出ている栄周辺への回帰が見られます。住宅地の1位になった中区栄5丁目。最寄り駅は松坂屋やパルコが並ぶ大津通にも間近な市営地下鉄鶴舞線「矢場町」です。

 そこから東に久屋大通を挟んだ一画。表通りにはオフィスビルが並び、所々にマンションも立っていますが、住宅地という雰囲気ではありません。一歩中に入ると飲食店や風俗店が多く、近くの池田公園の周辺は治安もイマイチなエリアとなります。

 そんなこともあって、坪100万円台という格安価格で取引されていたのですが、今では300万~350万円まで急騰しています。地下鉄桜通線「中村区役所」周辺と似た感じです。

 鶴舞線に乗り入れている名鉄豊田線「梅坪」に近い2位の東梅坪町(豊田市)、リニモ「はなみずき」に近い3位の久保山(長久手市)は、いずれも坪60万円台で取引されている人気のベッドタウンです。

 今回の公示地価では、利便性はいいものの、これまであまり注目されてこなかったエリアが脚光を浴びているように思います。その例が、4位荒田町2丁目と5位鶴舞4丁目のある昭和区です。鶴舞線「荒畑」や「御器所」が最寄り駅で、都心へのアクセスはとてもいいのに地味な町でした。マンション開発に伴う地価上昇で坪200万円台を大きく超え、今回ランクイン。その結果、同じ沿線でも高級住宅地で知られる「八事」と地価が逆転してしまいました。