日本GE役員などを歴任して新刊『ストーリーでわかるファシリテーター入門』を上梓した森時彦氏と、日本で初めてファシリテーションを学べる実践的な企業研修プログラムを開発し展開したピープルフォーカス・コンサルティング創業者の黒田由貴子氏。ファシリテーションの普及に長年努めてきたお二人に、個人や組織がファシリテーター型リーダーシップを備えるための要点を3回にわたって語り合っていただいた。(構成:谷山宏典)

適切なステップを提示できれば
社員は自ら考え、動くようになる

森時彦さん(以下、森) ファシリテーションが組織に浸透しない、もうひとつの大きな理由は、「導入したものの、その効果を実感できていない」ということもあるのではないでしょうか。つまり、社内の会議でファシリテーションを導入して話し合ってみたものの、結局いいアイデアが出てこなかったという理由です。

黒田由貴子さん(以下、黒田) ファシリテーションを試したものの成果がなかった、というときはだいたい2つのケースに分けられると思います。ひとつは「意見がまったく出ませんでした」。もうひとつは「いろいろ意見は出たけれど、まとまりませんでした」という場合です。

 「意見は出たものの、大した内容ではなかった」とおっしゃる方もいますね。

黒田 ただ、いずれの場合でも「成果がなかった」から「ファシリテーションには効果がない」と断定するのは早計ですよね。むしろ、成果が出ない最大の原因は、会議の進行役の方のファシリテーションスキルが足らなかったと考えるべきです。

 たとえば、会議の進行役の方が参加者に「何かいいアイデアはないか?」と一方的に問いかけるだけでは、なかなか意見は出てこないし、出てきたとしてもその議論はまとまりがないものになってしまいます。全員から意見を引き出し、上手く整理していくには、「まず、この点についてどう思うか?」「次に、この点に関してアイデアを出してほしい」と、進行役の人がある程度道筋をつけながら話し合いを進めていくことが大切だと思います。

 同感です。「○○についてどう思うか?」みたいなざっくりとした問いかけでは、ありきたりな意見しか出てこないでしょうし、そもそもファシリテーションになりません。

 黒田さんがおっしゃった「道筋をつける」ということでは、以前私がコインパーキングを運営している会社のコンサルティングをしたときのエピソードが参考になるかと思います。

 その会社は「地域ナンバーワンのコインパーキング」という看板を掲げていました。そこで私が社員のみなさんに「ナンバー2はどこですか?」と尋ねてみたら、誰も答えられない。次に「では、なぜ自分たちがナンバーワンだと知っているのですか?」と質問したら、「社長がそう言っているからです」と異口同音に言うわけです。

黒田 上の発言を鵜呑みにするだけで、自分たちで調べたり、考えたりしていなかったのですね。

 そうです。そのため、まずは「次回のミーティングまでに、この地域一帯にどんなコインパーキングがあるのか、調べてまとめてくれませんか?」と課題を出しました。すると、1週間後のミーティングでは、拡大した地図に自分たちの駐車場と競合の駐車場のすべての位置をマーキングして、各駐車場のスペース数を記載したものが出てきました。

 そこで「これで自分たちがナンバーワンで、2位、3位がどこか私にもわかるようになりました。ところで、自分たちの数ある駐車場の中で稼ぎ頭はどこですか?」と次なる問いかけをしたところ、これも「???」という感じだったので、「次回までに調べてください。調べた結果を利益が大きい順に並べてみてください」とお願いしました。

黒田 利益順に並べ替えた結果、何かわかったのですか?