日本GE役員などを歴任して新刊『ストーリーでわかるファシリテーター入門』を上梓した森時彦氏と、日本で初めてファシリテーションを学べる実践的な企業研修プログラムを開発し展開したピープルフォーカス・コンサルティング創業者の黒田由貴子氏。ファシリテーションの普及に長年努めてきたお二人に、個人や組織がファシリテーター型リーダーシップを備えるための要点を3回にわたって語り合っていただいた。(構成:谷山宏典)

ファシリテーションは
日本に「普及」したか?

森時彦さん(以下、森) 黒田さんが翻訳された『ファシリテーター型リーダーの時代』(プレジデント社)の出版が2002年12月。その翌年2003年には、堀公俊さんの呼びかけで黒田さんや私も参画して、NPO法人日本ファシリテーション協会を設立しました。2000年代の初頭は、まさに日本におけるファシリテーションの夜明けの時代だったわけですが、それから15年経った今の状況をどのようにご覧になっていますか?

黒田由貴子さん(以下、黒田) 隔世の感と言いましょうか。私が取締役を務める株式会社ピープルフォーカス・コンサルティングでは、17、18年前ぐらいから企業向けにファシリテーションの研修を実施しています。

 当初は「ファシリテーションとは何か?」という入口の部分の説明にかなりの時間を割いていましたが、今の参加者のみなさんはファシリテーションという言葉やその必要性についてはすでに理解されていて、「どうすれば会議などを上手くファシリテートできるか、その方法を教えてください」というニーズに変わっています。日本でもファシリテーションという言葉が一般的なものになったという実感があります。

 さまざまなところで行われるセミナーやパネルディスカッションでも、以前は進行役の人を「司会者」「モデレーター」と呼んでいましたが、最近ではファシリテーターと呼ぶことが増えていますしね。

 以前のインタビューでもお話をさせていただいたのですが、私が2004年に『ザ・ファシリテーター』(小社刊)という本を出したときには、担当編集者から「ファシリテーターという言葉をタイトルに使っても読者にわからないのではないか」という指摘を受けました。当時はそのぐらいファシリテーションやファシリテーターの認知度が低かった。

黒田 『ファシリテーター型リーダーの時代』のとき、私もまったく同じ経験をしました。同書は、リーダー論というより、ファシリテーションの入門書ですが、編集長からは「読者はファシリテーションのことを何も知らないので、『ファシリテーションの基礎』みたいなタイトルでは誰も手に取りません」とはっきり言われましたから(笑)。

 その当時と比較すれば、ファシリテーションを取り巻く状況は本当に変わりましたよね。当社のクライアントを見ていても、大部分の企業が研修プログラムにファシリテーション研修を組み込むようになっています。