5月6日に幕を閉じた「2018世界卓球選手権スウェーデン大会」。惜しくも王者中国には及ばなかったが、日本女子チームは堂々の銀メダルを獲得。東京五輪での金メダルも現実味を帯びる実力を見せつけた。近年、日本卓球は男女を問わず急速に強化されており、とくに10代選手の躍進が目覚ましい。その礎を築いたのが、「ミスター卓球」荻村伊智朗氏である。その波瀾万丈な生き様を描いたノンフィクション『ピンポンさん』(角川文庫)の著者であるジャーナリスト・城島充氏に、荻村氏の壮大かつ驚くべき人生について語っていただいた。(構成:前田浩弥)

2018年世界卓球の女子表彰式。銀メダルを獲得した日本女子チーム。写真:千葉格/アフロ

日本を代表する20世紀のスポーツマンは誰か?

 荻村伊智朗さんは、日本卓球界の伝説ともいえる人物です。
 都立西高1年生のときに卓球を始めると、たった5年で世界の頂点に。卓球世界選手権の優勝はシングルス・ダブルス・混合ダブルス・団体合わせて12回を数えます。超攻撃的な卓球で世界を席巻する姿は、戦後間もない日本に勇気を与えました。

 卓球を通じて世界各地でプレーをした荻村さんは、現役時代からグローバルな視点を持っていました。周囲の反対をおしきってスウェーデンにコーチとして半年間滞在しましたし、中国の周恩来首相からの求めに応じ、卓球ニッポンのノウハウを惜しみなく伝えたことはよく知られています。

 現役を引退してからも、その活動は国内の枠にとどまらず、1987年には3代目の国際卓球連盟会長に就任しました。ヨーロッパで発祥した競技の国際競技連盟会長にアジア人が選任されるのは歴史上初めてのことでした。卓球界のトップとして世界中を走り回った荻村さんは、国際オリンピック委員会のサマランチ会長からの信望も厚く、次期会長候補に名があがるような存在だったのです。