不妊治療での長期にわたる実績と
総合的なソリューションの提供

 不妊治療領域もまた、メルクを語る上で欠かせない重点領域だ。この領域では、グローバル リーディングカンパニーであり、1950年代から60年以上の実績がある。

 その最大の特徴は、関連する治療薬だけでなく、不妊治療に関わる最先端の医療技術によるテクノロジー製品まで、総合的な製品ポートフォリオを持つことだ。

 病院で医師により処方される薬剤とは別に、ART(Assisted Reproductive Technology)と呼ばれる生殖補助医療に携わるラボスタッフが使うテクノロジー製品を提供している。つまり、赤ちゃんを希望するカップルの夢の実現を支援するために、不妊治療のどの過程においても貢献できることを目指している。

 「例えば体外受精では、どの受精胚を選択するかの判断も重要技術の一つです。当社は、そうしたサイエンスとテクノロジーの両方の力が必要とされる不妊治療領域で、医師やサポートスタッフの皆さまにとって頼りになるソリューションプロバイダーであり続けてきました。不妊治療は、命の創出に関わる生殖補助医療であり、病気を治療する医薬品とは違った意味での社会的な使命と誇りを感じながら事業を展開しています」(デ・モラルト社長)

 治療分野だけでなく、社会に向けた「妊活®」の啓発活動にも力を入れている。2017年には、妊活®や不妊治療に対する意識調査を行い、日本において取り組むべき課題や必要とされる情報を明らかにした。調査は今年も実施し、単に治療製品を提供するだけでなく、赤ちゃんを欲しいと望む人たちに正しい情報を伝えることにも継続して取り組む考えだ。

 「当社はがん領域では患者さんの命をつなぐサポートをし、不妊治療領域では命を生み出すサポートをしています。つまり二つのスペシャリティを通じて、日本の少子高齢化の課題に取り組んでいるとも言えます」とデ・モラルト社長は言う。

 がん領域では、遺伝子情報に基づき高い効果が期待される患者に適切な薬を届ける「Precision Medicine(プレシジョン・メディシン)」の推進と貢献を重要視している。現在、開発が進む薬剤も、プレシジョン・メディシンの考えに基づくもので、「プロフェッショナルたちが、その高い専門性を生かして今後も日本の医療、ヘルスケアに貢献していきます」(デ・モラルト社長)