お隣の韓国では、1990年代後半からIT化が一気に進み、中でも行政については国連の電子政府ランキングではここ数年1位が指定席となっている(日本は順位を下げ続け2012年は18位)。90年代前半に日本でITを学び、現在は、行政、医療、教育などの分野でITコンサルティング事業を展開するイーコーポレーションドットジェーピー社長の廉宗淳(ヨム・ジョンスン)氏は今、日韓両国の情報化に関する深い知見を活かして、自治体や国の情報政策に深く関わっている。廉氏が見た日韓の共通点と、情報化における日本の課題について聞いた。
かつて背中を追っていた日本の、情報化の遅れに驚き
――廉さんは韓国と日本でITコンサルティングのビジネスを展開しています。現在日本ではどのようなテーマに取り組んでいますか?
日本では2000年に会社を設立し、主に「行政」「医療」「教育」という3分野におけるコンサルティングを行っています。03年から聖路加国際病院のITアドバイザーを務めるほか、06年からは青森市の情報政策調整監、07年からは佐賀県情報企画監として、公務員の立場で自治体のIT戦略立案や推進にも携わっています。また、10年からは総務省の電子政府推進委員や政府情報システム改革検討会構成員も務めており、各省庁の電子政府事業について提言を行う活動もしています。
――韓国は日本に比べ、電子政府がかなり進んでいるそうですね。
歴史的に韓国は長い間、日本の背中を追いかけていました。バブル経済が崩壊した93年ごろは、韓国も日本と非常に似た社会問題を抱えていました。しかし、97年の通貨危機をきっかけに韓国は大きく変わり、今や韓国は、国連の電子政府ランキング第1位と評価されるIT先進国になりました。一方、日本は同じランキングで18位です。それなのに日本では、学ぶべき海外はアメリカや欧州しかないと考えている人が非常に多いのが残念です。
印鑑登録や戸籍制度、住民票の制度などは、日本が韓国にもたらしたものです。こうした制度は欧米にはありません。韓国はもともと、日本の植民地時代の制度を下敷きにして現在に至っていることもあり、日本と韓国の行政システムは非常に似ているので、行政におけるIT活用では欧米よりも参考になるはずです。