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ありそうでなかった「ITのためのITサービス」で
急成長する「サービスナウ」の戦略

末岡洋子
2018年9月14日
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普通のワーカーの仕事をもっと効率化できないか――2003年の創業以来、この課題に取り組んできたのがサービスナウ(ServiceNow)だ。ITサービス管理からスタートし、カスタマーサービス、人事などに従事する人の業務効率化をクラウドで提供する。世界で最も革新的な企業と言われる同社の強さはどこにあるのだろうか? 日本法人を率いる村瀬将思氏の話を中心にまとめる。

プラットフォームこそ
サービスナウの強み

ServiceNow Japanの村瀬将思社長

 今年5月末、Forbes誌は8回目となる「最も革新的な企業」の1位にサービスナウを選んだ。常連のセールスフォース・ドットコムやテスラ・モーターズを抑えて、初の首位だ。実際のところ革新性の測定は難しいが、サービスナウの人気が高いことは間違いない。今年5月初めに米ラスベガスで開催した年に一度のプライベートイベントには、世界中から1万8000人が集まった。同社のクラウドサービスの更新率は97%以上を誇る。日本でこそ知名度は高くないが、ITサービス管理に導入して30万人の社員が利用する独シーメンスなど、大型の事例も多数出てきている。

 「最も革新的な企業」に選ばれたForbes特別号の表紙を飾ったサービスナウの創業者、Fred Luddy氏が同社を創業したのは、今から15年前のことだ。Luddy氏は前職で最高技術責任者(CTO)を務めていた時から、現場のワーカーの生産性を高めるにはどうすれば良いか、また彼らにとってITが難しいことなどを課題に感じていた。

 そこで最初に構築したのが、ITサービスを管理するためのソフトウェアだ。ITに問題があった際にサポートを求めるチケットを管理するほか、使用中のソフトウェアの設定やバージョン管理などを行うもので、ITサービス管理(ITSM)と言われる分野の製品だ。

 それまでITSMを提供するためには、インフラの調達、データベースの調達、OSインストール、データベースのインストール、要件定義と様々な作業が必要で、場合によっては構築に1年以上を要することもあった。だがサービスナウを使えば、すぐにITSMを利用できる。そのメリットを示すため、ロゴのNowの“o”に、電源ボタンの絵柄を採用。ボタンを押せばすぐに使えることを表してきた。

 その土台となる技術として開発したのが、「Now Platform」と呼ぶプラットフォームだ。Now Platformを基盤にして、ITSMから人事、カスタマーケア、セキュリティなどに機能を拡大していった。各機能に共通しているのは、人の働き方を変えるという視点だ。

 「当時、プラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)というコンセプトはなかった」と村瀬氏は振り返る。ITSMを始め、サービスをクラウドで提供することからSaaSベンダーと括られるが、プラットフォームこそが同社の差別化技術となる。「単一のプラットフォーム、単一のデータベース、その上に様々なアプリケーションが載るというモデルは、サービスナウ以外に存在しない。特に競合がいないまま成長することができたので、外的要因はとても恵まれていた」と分析する。

 様々なアプリケーションを揃えることができたのは買収によるところが大きいが、「我々は買収したものをスイートのようにつなぐことはせず、取得した技術を細分化して同じアーキテクチャの上に作り直す」という。そのため、買収した技術を顧客に提供するまでに時間がかかるが、性能など時間以上のメリットを実現できる。例えばこのところ強化しているセキュリティの場合、セキュリティオペレーションのBrightPoint Securityを買収、その1年後のリリースで脅威インテリジェンス機能として登場している。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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