安倍政権の年金制度改革安倍総理の3期目、最大の課題の1つが「年金制度」です Photo:PIXTA

 安倍晋三総理が自民党の総裁選挙に勝利し、2021年まで現政権を維持することが可能となった。今後3年間の経済政策の最大の課題は、増え続ける借金に依存した社会保障、その中でも最大の支出である「公的年金制度の改革」である。

 財政赤字の是正と言えば消費税率の引き上げが焦点となる。しかし、2019年度に引き上げられる予定の消費税率2%の増収分5兆円は、2018年度予算の赤字額(23.8兆円)の2割強に過ぎない。財政赤字の主因である増え続ける社会保障費を賄うためには、消費税率を10%へ引き上げるだけでは不十分であり、今後とも税率を持続的に引き上げなければならない。こうした事態を防ぐためには社会保障費の合理化が避けられない。

 社会保障費の約半分弱を占める公的年金は、老後の生活を支える大きな柱であり、その削減は容認できないといわれる。しかし、公的年金は生活保護のような弱者保護の手段ではなく、「長生きのリスク」を分散するための保険である。これは死亡した人の家族の生活を守る生命保険と正反対の機能であり、早く死亡した人の積立金が長生きする人の年金に回される再分配の仕組みである。

 年金が保険原理にもとづく以上、平均寿命の伸長という「長生きのリスク」の高まりに応じて保険料を引き上げなければ、年金制度は維持できない。ところが厚労省は年金保険料に上限を設定してしまったので、後は給付面の調整しかない。この民間保険では当然な保険収支の均衡を維持するための制度改革が、これまで政治的な配慮から先送りされてきた。これが年金保険財政悪化の主因である。この過去の「年金政策の不作為」のツケを解消することは、長期安定政権でなければできない最重要課題である。

なぜ政府は支給開始年齢の
引き上げをタブー視するのか

 年金保険における「長生きのリスク」を抑制するもっとも普遍的な手法が、年金を受け取れる年齢を平均寿命に連動して引き上げることである。これを「年金の踏み倒し」というのは誤解であり、平均寿命の伸長で自動的に増える生涯給付の増加分を中立化するだけである。