就業率に陰りがでてきたPhoto:PIXTA

 円安などによる企業収益の改善が続くなかで、賃金の上昇が期待されてきた。実際、労働市場は逼迫し、人手不足を訴える声はずっと続いてきた。だが賃金上昇の動きは鈍く、足元では、高原状態だった新規求人に対する就業率も鈍化が目立つ。「デフレ脱却」を掲げてきた政府・日銀のシナリオはまたまた、狂いかねない。

日銀短観で確認された
企業の投資意欲の強さ

 先週に発表された日銀短観の9月調査では、大企業製造業の業況判断D.I.(「良い(%)」-「悪い(%)」)が4期連続の悪化となった.。

 ただ、多くの企業が業況が「良い」と回答していることに変わりはなく、海外需要の鈍化や一連の悪天候、米国主導の保護主義への懸念といった悪材料が重なった割に、小幅な調整にとどまったとみるべきだ。

  むしろ、子細に見ると内容は良かったともいえる。まず、今年度の設備投資計画は大企業全体で+13.4%と2ケタ増を維持した。あくまでも「計画」であり、実際にその勢いで投資が実行されるかはわからないが、企業の投資意欲の強さははっきりとうかがえた。