グルーピングで「意思決定」が正常化する

 また、みんなが出した意見をグルーピングしやすいのも、会議で付箋を使う大きなメリットです。

 メンバーには、付箋を1枚ずつ示しながら、手短にその内容を説明してもらうのですが、発表の終わった付箋は、ホワイトボードやテーブル中央に広げた大きな紙に、どんどん貼りつけていきます。そして、同じような意見を書いた人は「同じ意見です」と言いながら、自分の付箋をすぐそばに貼っていくのです。

 たとえば、下図は、メンバーに「やりたいけれどできていないこと」「できれば本当は少なくしたい仕事」を書き出してもらったものですが、ひとりが「突発対応」という付箋を出したら、「上司からの急な依頼」「客先からの急な依頼」「客先への謝罪」などの付箋が集まってきます。

「付箋ワーク」グルーピング

 また、他のメンバーの発表を聞きながら別の問題や課題を思いついたら、その場で新しい付箋を書きます。「突発対応」について複数の付箋が集まるのを見て、新たに「客先からのクレーム」「他部署からの急な依頼」などを思いついたら、その場でどんどん付箋を書いて貼りつけていくのです。このように、付箋を使えば、自動的にグルーピングができあがっていくわけです。

 このプロセスも楽しく行うことが大切です。
 楽しいからこそ、他のメンバーの意見に触発されて、「そういえば、これもあるね!」などと次々と本音の意見が飛び出してくるからです。そのような雰囲気をつくるためには、付箋を貼り出すペーパーの周りにメンバーに集まってもらって、近い距離でディスカッションするのがおすすめです。心理的な距離も近くなって、お互いの意見を言いやすくなります。ホワイトボードに集まってもらって、身振り手振りを加えながら話し合うのも、話しやすい雰囲気を生み出すうえでは効果的です。

 もちろん、マネジャーはすべての発言を否定してはいけません。的外れのように思える意見であっても、「なるほど、そういう見方もあるよね!」「これは、新しい意見だね!」などと、メンバーの「発言する勇気」を後押しするようなコメントを心がけてください。メンバーのディスカッションが盛り上がってくれば、あとはそっと見守っていれば大丈夫。きっと、メンバーの本音がたくさん出てきているはずです。

 そして、全員の発表が終わったら、全体を見渡しながらもう一度グルーピングを検討します。すると、何が重要な問題なのかが一目瞭然となります。先ほどのケースであれば、「新規開拓ができていない」「突発対応が多い」という2つの問題から解決を図ろうという意思決定がしやすくなるわけです。

 これも、付箋の重要なメリットです。なぜなら、“声の大きな人”がムリやり自分の意見を通すことが難しくなるからです。付箋の数が多いということは、その意見に賛同する人が多いという証拠。付箋をグルーピングすることによって、それが明確に示されるために、より民主的な意思決定を実現することができるのです。「働き方改革」は、みんなの納得感をベースに進めていくことが重要ですから、この付箋のメリットを最大限に生かすようにするといいでしょう。