週刊ダイヤモンド2018年11月10日号は「変われぬ東芝 変わる日立」です。週刊ダイヤモンド編集部では、歴代の担当記者が両社の経営戦略や業績を取材してきました。そこで、今週の特集に合わせて、両社において「中年期」と位置付けられる2000年代中頃以降に社長に君臨したトップのインタビューをシリーズでお届けします。第3回は週刊ダイヤモンド2012年12月29日・2013年1月5日号新年合併号で掲載した中西宏明氏のインタビューです。同氏は2010年から2014年に社長、14年以降は会長を務め、現在は経済団体連合会会長に就任しています。インタビューは日立の歴史上初となる海外での取締役会が開催された、インドで行われたものです。(経歴、年齢は全て掲載当時のもの)
──100年以上ある日立製作所の歴史上、初めて海外で取締役会を開いた狙いは何か。
海外から世界と日本を見るというのが、私が進めているグローバル化だ。中でもインドに焦点を当てたのは、市場のポテンシャルの高さに比べて、まだ小さい日立の事業規模を早く大きくしたいからだ。
グローバル展開で次のステージを考えると、“現地化”が大きな前提条件となる。今までは、安さ第一という“インドプライス”の存在が、市場への参入に二の足を踏ませる部分があった。ところが、それが世界標準価格になる危険性を感じつつある。インドで生き残れないと、世界のどこに行ってもダメだという時代になってきた。
したがって、単にインドを巨大消費地と捉え、日本のマザー工場で作ったものをインドで組み立てるのではない。設計や製造、マーケティングに販売まですべてを現地で行い、インドで耐えうる製品で世界と勝負をするというのが、真のグローバル企業だと考える。
──三菱重工業との火力事業統合のように、2012年後半には大胆な経営判断が一気に表面化した。“中西改革”の成果か。
各事業が世界で競争力を持っているかが重要な試金石となる。どうすればそうなるのか、常に私から各事業部門のリーダーに問いかけている。英国の原発事業会社ホライズン・ニュークリア・パワーの買収、日立金属と日立電線の合併、三菱重工との事業統合といった決断も、すべてはその問いかけの延長線上にある。
例えば三菱重工との事業統合でいえば、世界で戦うためにガスタービン事業を強化する必要があった。35%のマイノリティ出資となるが、三菱重工との火力事業統合で誕生する新会社を、日立としても活用したい。三菱重工とは、その考えと手段を持たせてもらえることで合意している。