自動運転トヨタは「モビリティ2.0」への対応を急いでいます Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

「クルマ会社」からの脱皮を狙うトヨタ

 今年1月、トヨタ自動車・豊田章男社長の発言が注目を集めた。米国ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES 2018」でのことだ。

 プレスカンファレンスのスピーチで豊田社長は「クルマ会社を超え、人々のさまざまな移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革する」と宣言。「自動運転車やさまざまなコネクティッドサービスに必要なモビリティサービスプラットフォームをつくる会社になる」と、自社の展望を語ったのだ。

 そして早速その具体的な施策の1つが8月28日に発表された。ライドシェアサービス大手の米Uberに約550億円を投資し、自動運転車を共同開発するというものだった。

 具体的には、Uberとトヨタがそれぞれの自動運転技術を統合し、ライドシェアサービス向け車両を開発する。2021年までにはトヨタのミニバン「シエナ」の自動運転モデルを試験導入する構想だ。

 さらに10月4日の発表は記憶に新しいのではないだろうか。ソフトバンクグループと共同で新会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」を設立するとの発表だ。

『モビリティ 2.0~「スマホ化する自動車」の未来を読み解く』『モビリティ 2.0~「スマホ化する自動車」の未来を読み解く』
深尾 三四郎 著
日本経済新聞出版社
1600円(税別)

 トヨタには、インターネットにつながった自動運転車を最適制御する技術がある。一方ソフトバンクは、スマホやセンサーなどからデータを収集・分析し利用者の需要を予測するテクノロジーを有している。新会社MONETでは、この両者を組み合わせようとしている。

 それにより、利用者が必要とするクルマをジャスト・イン・タイムで配車するサービスが可能になるからだ。

 世界の自動車産業のガリバーであるトヨタ自動車は、どうやら本気でクルマ会社からの脱皮を狙っているらしい。

 本書『モビリティ 2.0』では、EV(電気自動車)や自動運転、ライドシェアなど、近年の自動車業界の新たな取り組みを「モビリティ 2.0」と名づけている。そしてモビリティ 2.0によって社会全体がどう変わろうとしているのかを、各国の事例などを紹介しながら、わかりやすく解き明かす。

 著者の深尾三四郎氏は1981年生まれ。2003年にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業。野村證券金融研究所、英HSBCの自動車部品アナリストを経て、米国および香港のヘッジファンドで日本・韓国・台湾株のシニアアナリストを務め、スマートフォン、液晶テレビ、太陽電池の進化を目の当たりにしてきた人物だ。