カルトワインが高額な理由

 カルトワインが誕生したのは1980年代半ばごろのことでした。80年代に入ると、弁護士、医者、金融関係者などの富裕層が、リタイア後の趣味としてナパでワイン造りを始めるようになります。しかし、これまでビジネスの第一線で活躍していた彼らのワイン造りは趣味にはとどまらず、大量の資本を注ぎ込んだビジネスとして発展していきました。

 ここで生まれたのが、高品質なワインを小ロットで生産するカルトワインのスタイルです。カルトワインの特徴のひとつにその希少性がありますが、あえて生産量を抑え、コレクターズアイテムとしてファンを増やしたのです。

『教養としてのワイン』でも詳しく紹介しましたが、たとえばスクリーミング・イーグルの生産量は年間たった500ケース(1ケース12本)6000本しかありません。それゆえ、スクリーミング・イーグルの世界の小売価格の平均額は1本2785ドル(約33万円)にものぼります。

 2006年産のインペリアルボトル(6000ml)にいたっては、2013年にシカゴで開催されたハート・デーヴィス・ハート社のオークションで、3万5850ドル(約430万円)で落札されています。

 500ケース・6千本と言ってもその希少性を想像しにくいかもしれませんが、これはロマネ・コンティの生産本数とほぼ同じです(もちろん、収穫年によって多少の違いはあります)。世界的にも有名なボルドーの1級シャトーでも10万から20万本程度を生産するので、その20分の1から30分の1程度と聞くと、その希少性をおわかりいただけると思います。