M&Aはあくまでも
手段であって目的ではない

 元来、M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略で、直訳すれば「企業の合併と買収」という意味がある。言い換えると、合併や株式取得、事業譲渡などの手法を用いて、会社もしくはその経営権を取得することだ。つまり企業にとってM&Aは、企業の競争力や生き残りを図っていくために欠かせない経営戦略の一つでもある。故に、買い手は原則としてM&Aによるシナジーを期待する。
 「重要なのは、M&Aはあくまでも手段であって目的ではないことです。買い手側にとってシナジーを創出できるか否かは、経営統合後のマネジメントの巧拙に左右されます。特に売り手が中小企業の場合は、その社風が尊重されることで従業員のモチベーションが維持され、経営統合は円滑に進みます。つまり売り手のオーナー経営者は、自分の会社の文化を理解し、強みを生かしてくれる会社を効率よく探すことが重要になります」(筒井室長)

だからこそ信頼できる
M&A仲介会社を選びたい

 企業経営の目的は、企業を継続させることにある。ならば、事業承継は経営者の責務であると筒井室長は言う。社長や経営権が代わっても企業が永続するような仕組みをつくること。大切なのは、ファミリービジネスの良さや強みを生かしたまま、一番良い形でバトンタッチすることだ。それが親族内承継であってもM&Aであっても、準備が必要になる。

「東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年には、団塊経営者の大量引退期に突入するといわれています。中小企業の事業承継問題はまさに正念場であり、円滑に事業が承継されることを期待しています」と筒井室長。

 そのためには、日頃からアンテナを立て、常に情報の感度を高め、信頼の置けるM&Aのサービスや仲介会社を選択すること。それができる経営者は、戦略的なM&Aを含めて、事業承継の波を乗り切っていけるはずだ。