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高齢患者急増で過労死寸前! 看護師の「悲惨な職場」を救え 小林美希

他人の命を救うため、自らが宿した尊い命を失う
看護師の母性保護を顧みない「流産病棟」の非情

小林美希 [労働経済ジャーナリスト]
【第2回】 2012年6月1日
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昼夜鳴り止まないナースコール
激務の看護師は常に流産と隣り合わせ

 「看護師の世界では、切迫流産(流産しかかる状態)なんて当たり前。それでも働き、流産する女性が多い」

 都内の民間病院(約500床)で働く看護師の芦屋沙希さん(仮名・32歳)は初めての妊娠で、自身に宿った新たな生命を失った。

 95%が女性の職種であるにもかかわらず、人手不足状態の看護の現場では、過酷な勤務と妊娠異常の問題が常に背中合わせとなっており、法の定める「母性保護」規定は無視され続けている。そのため、ベテランになるまで働き続けられない現実がある。

 内科系の病棟で働く沙希さんの日常は、まさに「走り回る」1日を過ごす。糖尿病や肺炎などを患った寝たきりの高齢患者を、中心に受け持つ。バイタルサインのチェック、点滴や検査、薬の準備や清拭(体を拭くこと)などの基本的な業務をこなす。

 寝たきりの患者には、褥瘡(床ずれ)ができないよう、2~3時間おきの体位交換が欠かせない。褥瘡ができ、悪化すれば、手の拳より大きな部分が腫れ上がり、膿が湧き出るような状態になる。最悪の場合、体の組織が壊死して切除が必要となる。

 しかし、寝たきり状態の大人の体を支えたり、動かすのは重労働だ。本来は、安全を保つためにも2人ペアで体位交換を行なうのだが、人手不足で1人でせざるを得ない状況。20代のうちから、沙希さんはもちろん、同僚の多くが腰痛持ちとなった。

 日勤でも夜勤でも、鳴り止まないナースコール。病状の変化だけでなく、「何か物をとって欲しい」「トイレに行きたい」「オムツが不快になった」「水が飲みたい」――。寝たきりの患者にとって、どれも深刻だ。

 ベッドサイドで患者に呼び止められても、「ちょっと待ってね」と言いながら、なかなか対応できない。さらに、病院は経営効率を高めるために、混合病棟化を進めている。ベッドに空きがあれば、オペ後の外科の患者も来る。診療科が違えば素人同然の世界で、いつミスをしないか緊張の日々が続く。

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小林美希 [労働経済ジャーナリスト]

こばやし・みき/労働経済ジャーナリスト。1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て、2007年よりフリー。労働問題を幅広く取材。『ルポ 正社員になりたい~娘、息子の悲惨な職場』(影書房)『ルポ “正社員”の若者たち~就職氷河期世代を追う』(岩波書店)『看護崩壊』(アスキー新書)『ルポ 職場流産~雇用崩壊後の妊娠・出産・育児』(岩波書店)『ルポ産ませない社会』(河出書房新社)』など著書多数。


高齢患者急増で過労死寸前! 看護師の「悲惨な職場」を救え 小林美希

高齢者が次々に入院し、まるで“姥捨て山”のように置いていかれる。1人で何十人もの患者を担当し、食事する時間も寝る時間もほとんどない。そんな病院で医師と共に激務に耐える看護師たちは、まさに過労死寸前だ。いったい、誰がこんな「悲惨な職場」をつくってしまったのか。その背景には、少子高齢化で高齢患者が急増する一方、医療の人手不足が深刻化していること、診療報酬との兼ね合いで病床削減が起き、特定の病院に患者が集中することなど、構造的な問題が横たわっている。このままでは、医療崩壊は避けられない。労働問題を取材し続けたジャーナリストが、看護師の現状をルポルタージュし、隠れた問題を鋭く提起する。

「高齢患者急増で過労死寸前! 看護師の「悲惨な職場」を救え 小林美希」

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