【西條剛央×佐宗邦威】動けなくなる人に共通する「裏の関心」とは?[特別対談(前編)]西條剛央(さいじょう・たけお)
Essential Management School代表。本質行動学アカデメイア代表取締役。若手研究者の登竜門といわれる日本学術振興会特別研究員DCおよびPDを経て、最年少で早稲田大学大学院(MBA)専任講師、客員准教授を歴任。専門は本質行動学。MBAでの哲学に基づく独自の授業が注目され、『Forbes』に取り上げられる。2019年より現職。2011年の東日本大震災に際して、構造構成主義(本質行動学)をもとに3000人のボランティアにより運営される50のプロジェクトからなる日本最大級の「総合支援ボランティア組織」に育てあげる。2014年、哲学に基づいて未曾有の災害に対応した功績が認められ、Prix Ars Electronicaのコミュニティ部門にて最優秀賞(ゴールデン・ニカ)を日本人として初受賞。「ベストチームオブザイヤー2014」「最優秀グッド減災賞」「NPOの社会課題解決を支えるICTサービス大賞」受賞。著書に『構造構成主義とは何か』(北大路書房)、『人を助けるすんごい仕組み』(ダイヤモンド社)、『チームの力』(筑摩書房)など多数。

西條剛央(以下、西條) はい、まさにそう思います。僕が「価値の原理」から展開しているのは、すべての人間は「関心」に応じてしか価値を認識できないからです。しかし多くの人が、世の中や外から与えられた情報を自分の関心事だと思ってしまっていて、本当は望んでいないものを望んでしまっているのではないでしょうか。

「大金持ちになりたい」「いい会社に入りたい」といった共同幻想、あるいは他者の関心の「憑依する力」はすごく大きいんです。それらは真の自分の関心ではないので、手に入れても喜びや価値は感じられませんから、そこを目指しても「自分」がどんどん消耗していくわけですね。

僕が立ち上げた、本質(エッセンス)を学ぶための場「エッセンシャル・マネジメント・スクール(EMS)」では、「ワークグラム」というアセスメントツールを使ってまず自分の「表の関心」、つまり自分が本当にやりたいことを117の関心のパラメータとして明晰に捉えていきますが、それはセルフ・マネジメントの本質でもあります。

あともう1つ、佐宗さんの本に出てくるイラストの「地下の世界」の一部に関わってくることとして、「裏の関心」があります。たとえば、「本が書きたい」のであれば書けばいいのに、書かない。それは、書かないことによるメリットや理由が隠れているからです。「喉が渇いた」のであれば何か飲めばいいだけですからね。

その理由を「裏の関心」から見ると、「恥をかきたくない」「自分の限界を知りたくない」といった不安や恐れがあったりします。だから「行動しない」ということが極めて合理的な選択、価値になっているわけです。

そういうとき、人は「自分はそういう不安や恐れを持っていないこと」にしがちです。でも、あるものをないことにしてしまうと、自分をマネジメントできなくなる。それで「なんでできないんだろう」といった不合理さにぶつかったり、「自分は意志が弱い」と自信を喪失してしまったりするんです。

だから、まずは自分の「裏の関心」を認めてあげることがスタートになるんじゃないかと。「自分はこんなことを恐れていたんだな……」と認められれば、「なんだ、そうだったんだね……」と思えて、そこで初めてセルフマネジメントできるようになる場合もあるんですよね。

【西條剛央×佐宗邦威】動けなくなる人に共通する「裏の関心」とは?[特別対談(前編)]