画像の説明 極東の都市・ウラジオストクまで、日本からたったの3時間。ロシアはとても近い国なのに、日本人にとってはあまりなじみがありません。しかも、どうも好印象を持っていない日本人の方が多い。北方領土問題やKGBのスパイ活動といったマイナスイメージがつきまとうからかも知れません。

 向こうも同じなのかと思いきや、モスクワでは今、空前の日本ブームが起きています。市内に1000軒もあると言われる「スシバー」は、実はほとんど全部ロシア人の経営。日本人が喜ぶ味にはほど遠いですが、そんな「なんちゃって寿司」をほおばるモスクワっ子であふれています。

 デジカメやパソコンなど、AV製品ではソニーやキヤノンが大人気。パナソニックの広告には、「世界のキタノ」こと北野武監督がデカデカと登場しています。「キタノの映画はクール」なのだとか。三菱やトヨタ、日産車がそこら中を走っているのにも驚かされます。

 ある「好きな国ランキング」では、フィンランドやドイツについで3位にランクインしたこともあったそうです。そう、歴史的背景もあって近隣諸国ウケの悪い日本にとって、珍しく好いてくれているのが、ロシア人なのです。

 かつ、オイルマネーで儲かったニューリッチが続々と誕生しています。何しろ、原油価格は10年前の10倍近くに跳ね上がっており、ロシア政府の貯金通帳「安定化基金」には、年4兆円もの勢いでおカネが貯まっているのです。

 欧州高級ブランドはこぞってモスクワに店舗を出し、自動車メーカーも現地生産工場を続々と作っています。こんな美味しい市場を逃す手はありません。

 しかし、進出にあたってはかなりの覚悟と戦略が求められるのも事実。旧ソ連崩壊からまだ17年しか経っておらず、法制度の未熟さや汚職、政府方針の強引な変更などの問題が絶えないからです。

 一足先に成長した中国とて事情は同じ。儲かる市場には違いないけれど、実情を正しく理解しなければ、進出しても痛い目を見てしまいかねません。

 10年ひと昔と言うけれど、ロシアや中国では、1年前ですらひと昔。それほどの速度で変化を遂げています。だからこそ、編集部総力現地取材で中国・ロシアの「今」を切り取ったこの特集。きっとビジネスマンの皆様の強力な情報源となることでしょう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 津本朋子)