快楽測定器!?

「さて、ベンサムは幸福という曖昧なものを『快楽』という具体的なものに置き換えることで客観的な事象として扱いやすくしたわけであるが、その後、彼はこの『快楽』の量を計算する式を作るため、快楽の種類や性質を徹底的に分析していく」

「ここでは詳細は省くが、ベンサムは自著の中で『快楽は14の種類に分類することができ、それらの快楽計算を行うためには、快楽に含まれる7つの構成要素を考慮しなければならない』という主張まで展開している。どうやら彼は本当に快楽計算が実現できると考えていたようだ。ちなみに、逸話によるとベンサムは『快楽測定器』という機械の発明すら視野に入れていたそうだよ」

 快楽測定器……!?

 今なら、脳に電極でもさして調べたりできそうな気もするけど、ベンサムはそこまで考えていたんだろうか? もちろん非人道的で見たくない絵面だけども……。

 それにしてもベンサムの快楽計算の話には、すごく執念じみたものを感じる。そもそも功利主義は、単純に言ってしまえば、「みんなが幸福になるような選択をしましょう」という話だから、基本的には誰もが賛同できる考え方だと思う。でも一方で、「そうは言っても幸福なんて人それぞれだし、幸福度の総量なんか測れるものじゃないから難しいよね」となって、そこで行き詰まって終わってしまうだけの話のようにも思える。

 しかし、ベンサムは、そこで思考停止せず、思いきって「幸福とは快楽だ」とし、その快楽の量を数値化して計算する方法を追究することで功利主義を実現しようとしたわけだ。