仕事以外の記憶が一切ない日々

 1年かけて行われた「新入社員プログラム」と、配属先事業部で取り組んだ「新規事業プロジェクト」で、私がいかに未熟であるかということと、「仕事のプロ」がいかに凄いかということを、徹底的に叩き込まれました。

 今となってはいい思い出なのですが、当時は、「明けることのない夜」「降りやまない雨」のような感じで、仕事以外の記憶が一切ない状態でした。

 入社1年目にしたことは、前述の「新入社員プログラム」と「新規事業プロジェクト」の2つです。

 まず、「1年かけて行われた新入社員プログラム」なのですが、これが何かというと、じつにユニークな、プログラムでした。

 人事も配属先も関与しない、すべて自力で考え、やり遂げる、放置プレーでした。

 その年、新入社員として入社したのは、私一人だけ。

 ちょうど、新卒採用について考え方が変わった区切りの年であり、「基本は中途採用、新卒はいいのがいたら」ということになっていたそうです。

 結果、私の知る限り、最も自由な新卒新社会人生活を体験することができました。

 どんな新卒新社会人生活だったかというと、1年を1学期、2学期、3学期に分け、学期ごとに配属する部署を自ら選び、それぞれの学期末に配属された部署の課題と解決策を経営会議でプレゼンする、というものでした。

 当時の詳細については、経営会議でプレゼンした「ワープロで作った紙の資料」が一部手元にあるだけで、あいまいな記憶に頼る限りなのですが、

 1年間の活動を「自ら考え、動き、成果を出す」という、まさに「仕事のプロ」の1回転目、という体験でした。

 私はよくわからないながらも、1学期は新規事業を創出する部署、2学期は顧客対応の部署、3学期は生産管理の部署を選びました。

 「新規事業を創出する部署」は、入社時にいったん配属された先だったので、そのまま、その部署にいさせてもらうことにしました。

 「顧客対応の部署」と「生産管理の部署」は、機械工業系の専門商社であったミスミの、「仕入れて売る」という構造の、価値の基本となる部署だと思って選びました。