ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

現代版「日本列島改造論」?
にわかに強まる公共事業拡大論
――森田京平・バークレイズ証券 チーフエコノミスト

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第69回】 2012年7月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

2013年の景気に見る
政治的な重要性

 米・中経済が減速する中、日本経済も減速ひいては後退する可能性があるのか、市場は警戒している。筆者は以下に見るように、「景気は2012年内は潜在成長率(当社推計:年率0.8%程度)を大きく上回るスピードで回復する一方、2013年前半には減速へ」と見ている。

 また、実質GDPが2四半期連続で前期比マイナスとなる景気後退(いわゆるテクニカル・リセッション)の可能性は、2012年はもちろん2013年も小さいであろう。

 しかし、仮に2013年を通じて景気が低迷、あるいはデフレ色が濃くなった場合には、2014年4月に消費税率を引き上げられない可能性もある。なぜならば、衆院で可決され参院に送付された消費増税関連法案には、法案が成立した後でも経済状況などを勘案して増税を停止できるという附則(附則第18条)が盛り込まれているからだ。

 これが、2013年の景気を下支えしなくてはならないという見方を政府・与党内で強めつつある。こうした中、にわかに公共事業拡大論が強まっている。

 以下では2012年内の景気展望を行ない、その後、2013年の景気の政治的側面を考えてみたい。

「3つの負のエネルギー」は
蓄積していない

 景気分析をしていて常々感じる点は、景気は回復するときと同様に後退するときにもエネルギーを必要とするということ。具体的には「過剰在庫」「過剰設備」「過剰雇用」が景気後退のための「3つの負のエネルギー」となる。

 この「3つの負のエネルギー」がどの程度蓄積されているか、つまり景気後退がどの程度起きやすい状況にあるかを測る上で、先週発表された6月調査日銀短観は極めて重要なメッセージを発した。

 すなわち、日本経済においては「3つの負のエネルギー」は蓄積されるどころかむしろ減少している。2013年に向けての景気シナリオの選択肢は「回復」か「減速」かであって、「後退」は外しておいてよさそうだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト]

しまもと・こうじ/1990年、東京大学卒業、日本興業銀行入社。調査部門で金利分析や経済予測を担当。2000年からBNPパリバ証券で投資調査本部長兼チーフストラテジストとして金融市場予測を担う。日本経済新聞社の債券アナリスト・エコノミスト人気調査の債券部門では06、08年に1位。金融庁の金融市場戦略チームや金融税制研究会、行政刷新会議の事業仕分けなどに参加。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

⇒バックナンバー一覧